社説

9条改憲 自民案/条文先行 本質論置き去りに

 憲法9条改正の必要性といった本質の議論が置き去りにされたまま、具体的な条文づくりだけが先行している、と言わざるを得ない。
 自民党憲法改正推進本部(細田博之本部長)がきのう執行役員会で、最大の焦点となる9条改憲の条文案について計7案を提示した。
 意見集約の軸となるとみられるのが、安倍晋三首相(自民党総裁)の提言に沿った案だ。戦力の不保持などを定めた9条2項を維持しながら、「必要最小限度の実力組織」として「内閣総理大臣を最高指揮監督者とする自衛隊を保持する」と記した。別立ての「9条の2」として新設する。
 9条改憲に慎重な与党・公明党への配慮と共に、できるだけ国民に受け入れやすいマイルドな条文案を狙ったのだろうが、正面を避け迂回(うかい)路を目指したため、「付け焼き刃」となった感が否めない。
 「改正しなければいけないというのが先にきている。中身よりも通りやすいものでという感じになってしまっている」(福田康夫元首相)という声が出るのも当然だろう。
 それゆえに、党内では異論が依然として根強い。2項を削除して、「陸海空自衛隊」を保持する石破茂元幹事長の案や「国防軍」創設を掲げた2012年党改憲草案なども併せて示された。
 そもそも政府見解は自衛隊合憲で貫かれており、国民の多くがそれを支持してきた。にもかかわらず、あえて明記するのはなぜなのか。
 学者らの自衛隊違憲論の「呪縛」から解き放したいというのが、安倍首相の言い分だ。「『自衛隊は違憲かもしれないが、何かあれば命を張って守ってくれ』と言うのは無責任」と主張する。
 安倍首相は自衛隊を明記しても、任務や権限は変わらない、と強調する。しかも、国民投票で否決された場合であっても、自衛隊の合憲性は揺るがないとも言う。
 それでは現状追認のためにわざわざ約850億円(衆院法制局試算)という多大なコストをかけ、国民投票にかける意味に乏しい。
 結局は「自衛隊員が気の毒」という感情論の域を出ていないのではないか。改憲の必要性、妥当性が認められるだけの立法事実が存在しない現状の裏返しと言っていい。
 学校法人森友学園(大阪市)に関する財務省の決裁文書改ざん問題で与野党対立が深まった今の状況では、改憲論議のテーブルに着くことさえ、困難な状況にある。
 「改憲よりも政権の信頼回復が先」という石破氏の発言はもっともと言えよう。実際、当初もくろんでいた今月25日の党大会での改憲案提起は見送られる方向だ。
 「初めに改憲ありき」と疑念を抱かれるような案では到底、国民の理解が得られない。安倍首相のレガシー(政治的遺産)づくりのための9条改憲であってはならない。


2018年03月15日木曜日


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