社説

自民の憲法改正/「安倍1強」の断面を映す

 議論が生煮えのままで、なぜ、そんなに結論を急ぐのか。スケジュールありきの憲法改正に思えてならない。
 安倍晋三首相(自民党総裁)はきのうの党大会で、「自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打とう」と改憲へ意欲を見せた。二階俊博幹事長は党が目指す改憲4項目の条文素案をまとめたと報告。「憲法改正の実現を目指す」との2018年運動方針を採択した。
 9条改憲を巡る党内の意見対立を押し切り、駆け込みで党大会までに間に合わせた印象が強い。20年の改正憲法施行をもくろむ安倍首相の意向に配慮したことは明白だろう。「安倍1強政治」の一断面を映していると言えまいか。
 戦力不保持などをうたう9条2項は維持し、「9条の2」を新設して自衛隊保持を明記した素案が、安倍首相の提唱に沿った形になったことからもうかがえる。
 首相にすれば、2項を削除する案は党の「正論」ながらも、改憲に慎重な与党・公明党だけでなく、大半の国民の理解が難しいと考えていることは容易に想像できる。
 だから「迂回(うかい)路」として今回の9条改憲の条文素案が編み出されたに違いない。これを突破口に、次の改憲を経て2項を削除する2段階のシナリオを描いているのではないか。それゆえ、つじつま合わせの感じが否めない。
 当初書き込む予定だった「必要最小限度の実力組織」について異論が出たため、「必要な自衛の措置をとることを妨げず」と規定。「そのための実力組織」として「自衛隊を保持する」と定めた。
 ただ、今度は新たな論議が生じる可能性がある。「必要な自衛の措置」の解釈がその一つだ。制約のない集団的自衛権を含め自衛権行使がどこまで認められるか問われる。
 「必要最小限」の文言を削ったことで、装備の規模や内容、部隊の運用などに歯止めが利かなくなる、との懸念も出されている。
 さらには自衛隊が国会(衆参両院)、内閣、最高裁判所などと並んで憲法上の組織と位置付けられることを疑問視する向きもある。
 9条以外の他の改憲項目についても緊急性、必然性は乏しい。大規模災害などに備えるための「緊急事態条項」については、現行法改正で対応可能との指摘がある。そもそも法律と同じ効力を持つ政令を内閣が制定できることに強い危惧を抱かざるを得ない。
 「参院選合区解消」は、対症療法でなく衆参両院のありようから根本的に議論すべきだし、「教育充実」は憲法にあえて明記する必要はない。
 こうした中途半端な改憲案が、野党から賛同を得られるのかどうか疑わしい。ましてや財務省による「森友学園」の決裁文書改ざんは、安倍内閣の信頼を失墜させつつある。三権分立をうたう憲法をないがしろにする民主主義の危機。改憲どころではない。


2018年03月26日月曜日


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