河北新報特集紙面2012

2013年1月11日 河北新報掲載

vol.8 体と心を 和らげる。

「今できることプロジェクト」とは、市民の皆さん、企業・団体の皆さん、河北新報社が一緒になって、これからの被災地・被災者支援のあり方を考え、具体的なアクションへとつなげていくプロジェクトです。紙面では毎回、実際に行われている支援の事例を、いくつかの支援スタイルに分けて取り上げ、支援する立場の人と支援を受ける立場の人、双方の生の声をご紹介します。
マッサージや手もみをしたり、化粧やマニキュアをしてあげたり。おしゃべりをしながら、からだとこころが癒されるような活動が被災者の方に喜ばれています。今回はそんな「ヒーリング型支援」の中から、「ハンドケア」の事例です。

ハンドケアのボランティア活動に参加した埼玉県の会社員 古賀武仁さん(46)

ハンドケアで癒し効果 触れ合いが距離縮める

ボランティアの中には、マッサージなどで被災者と直接触れ合う形の活動も多くあります。埼玉県の男性はハンドケアの活動に参加し、ニーズを実感しています。

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「杜の都チーム ドルフィンドリーム」の活動に、2回参加しました。講習を受けた後、仮設住宅のお年寄りたちにハンドケアを施すんです。最初にプロからポイントを教えてもらえるので、素人でも安心してできますよ。わたしは覚えたケアを妻にもしています。
震災以降、自分にできることを考えてきました。以前に学んだことのあるマッサージ系の活動をしたいと思い、インターネットでドルフィンドリームに行きあたりました。
ケアを受けながら辛い体験を話される方もいます。家族も友人も亡くしたなどと聞くと言葉が出ません。わたしは友人の代わりになったつもりで耳を傾けます。人と触れ合うことでため込んだものを表に出し、前向きに生きるきっかけにしてほしいと思います。
何かをしてあげている、という考えはありません。むしろ想像以上に感謝されて「もっと頑張ろう」という気持ちになりますし、迷いながらも前に進もうとしている姿に逆に励まされます。
ボランティアの数は昨年秋以降、ぐんと減ったと聞いています。今からでも何か活動したいと思う方には、被災者の友人になってと伝えたいですね。寄り添い、一緒に思い出を作るような気持ちになってもらえればと思います。わたしもまた来ます。

仙台市宮城野区の仮設住宅に住む 鈴木邦子さん(79)

毎回の交流が楽しみ 長く続けてほしい

ボランティアとの交流を心待ちにしている被災者も少なくありません。仙台市宮城野区の女性は、ハンドケアを毎回欠かさず受け、活力にしているそうです。

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ハンドケアのボランティアさんたちは定期的に仮設住宅に来てくれます。わたしはこれまで6、7回、ケアを受けました。とても気持ちがいいですし、みなさん親切に話を聞いてくれるので本当にありがたいです。
先日は東京から家族で参加したという小学生の女の子が一生懸命、手をもんでくれました。孫のように、付いて歩くんです。わたしが育てたトマトをお土産に持たせたら、手紙を書いて送ってくれました。「優しいおばあちゃんに会えて良かった」「宇宙飛行士になるために勉強します」とありました。可愛くってね。
元の自宅は宮城野区蒲生にあり、津波で流されました。一緒に住んでいた娘一家は別のアパートで暮らしていますが、狭いので、わたしは仮設で一人暮らし。家を建ててみんなで暮らしたいのですが、経済的な問題など不安もあります。
いまは孫とも離れて寂しいですが、仮設住宅のみんなと助け合い、励まし合って暮らしています。ボランティアが来てくれて話をできるのは大きな楽しみ。仮設には若い人があまりいませんからね。なるべく長く来てもらえると嬉しいです。

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◎杜の都チーム ドルフィンドリーム 電話 022-287-8222

一般社団法人IDTAセラピスト協会(宮城県利府町)が展開する被災地支援プロジェクトの一つ。被災地の仮設住宅などに毎月複数回、ボランティアを派遣し、ハンドケアを行う。活動情報はホームページフェイスブックで発信している。同協会は昨年12月、仙台市若林区にココロとカラダ元気サロン「COCOKARA SALON」もオープン。被災地の女性が運営しており、就労支援につなげている。

ほかにも多くの団体が被災者と触れ合うボランティア活動に取り組んでいます。いくつかご紹介します。

  1. 1からだ復興支援隊・ボディヶ浜(宮城県七ケ浜町)
    被災者へのマッサージやストレッチ運動指導、清掃などさまざまな活動を行っている。柔道整復師や理学療法士など有資格者のほか、資格の必要のない事務サポーターを募集。ホームページからメールでの申し込みを受け付けている。
  2. 2癒しのプロ集団 チーム恵比寿(東京)
    整体師やマッサージ師、ネイリストらプロが参加している。一般の市民や学生は受け付けなどのサポーターとして参加できる。フェイスブックやホームページから申し込む。
  3. 3日本財団「足湯ボランティア」 電話 03-3597-5511
    東京から被災各地へのボランティアツアーを実施。足湯で被災者に心身ともに寛いでもらう。経験がなくても参加できる。東北各地からの参加については問合せを。