河北新報特集紙面2014

2015年3月22日 河北新報掲載 閖上追悼イベントで飾る絵灯篭作り 語り部たちの話を聞いた。みんなで力を合わせて作った。レポート

鎮魂と復興を願うボランティア活動プロジェクト 閖上追悼イベントで飾る絵灯篭作り 語り部たちの話を聞いた。みんなで力を合わせて作った。レポート

宮城農高生による語り部ガイド スマートグラスによるAR体験も

被災地のために今何ができるかを、読者の皆さん、賛同企業の皆さんとともに考え、行動している「今できることプロジェクト」。2月28日に、「3.11閖上追悼イベント実行委員会」の協力により「追悼イベントで飾る絵灯篭を組み立て製作するボランティア活動」に参加しました。
当日、絵灯篭製作に先立って、被災地閖上の現状を見学。閖上地区で被災した宮城県農業高校の生徒さんたちが、語り部として案内してくれました。語り部をつとめたのは食品化学科の生徒と実習助手山根正博さんら。地元閖上を思い、語り部として多くの人に閖上の今とこれからを伝えようと活動しています。

語り部ガイドをしてくれた宮城農高の皆さん

最初に訪れた閖上小学校前にて

今回の案内では、生徒有志が企画したAR(拡張現実)映像をスマートグラスで体験することができました。AR映像は、今立っている場所の震災直後の映像を360度で見ることができるというもの。参加者たちは閖上小学校、閖上中学校、日和山の3カ所で震災直後のAR映像を体験し声を出して驚いていました。

AR映像を体験する参加者の皆さん

生徒14人が犠牲となった閖上中学校前の献花台にて

日和山にて。被災した「佐々直」旧工場と名取市が建立した慰霊碑

日和山がある周辺一帯は非居住区域として復興計画が進められる

絵灯篭4面の台紙に1枚1枚、丁寧に絵を貼っていく作業。集中して何枚も続けると、けっこうきつい作業でした。それでも、みんなで楽しく助け合って、目標達成。参加者の皆さん、長時間、お疲れさまでした。

大きな被害を受けた閖上 その追悼の気持ちを込めて

閖上地区の被災状況と復興計画について、名取市震災復興部職員の方や「3.11閖上追悼イベント実行委員会」より説明があり、参加者の皆さんは真剣に聞き入っていました。「絵を描いてくれた皆さん、さまざまなボランティアの皆さんとの『共創』で成り立っています」と実行委員長・佐々木悠輔さん。

絵灯篭製作会場となった
パナソニック(株)仙台工場(名取市)にて

話をしてくれた
名取市震災復興部職員の方々

全国から寄せられた絵や書1枚1枚丁寧にのり付け

実行委員会・武田堆雄さんの指導で絵灯篭製作がスタート。枠のある台紙に絵をのり付けします。「のりは木工ボンドを薄めて、筆で塗りますよ」と説明があり、参加者は作業手順によって2人1組になったり、担当の持ち場に別れたりして作業をしていきます。貼り終わった台紙は、床に並べて乾燥。乾いたものから、組み立てやすいように折れ目をつけていきます。この日で合計約2,000セットを作成。目標を達成することができました。

武田さんがお手本を見せる

世代を超えて、共に創る

一心不乱に作業に集中

丁寧に、きれいに、じっくり

4面を組み立てた状態

完成した絵灯篭は床に並べて試験点灯

電子絵灯篭の絵の差し替えも行われました。電子絵灯篭は、風がある日でもあかりが消えないようにとパナソニック(株)仙台工場の協力で製作したもの。この日完成した電子絵灯篭が並べられ、照明を落として試験点灯。あかりが灯された絵灯篭を、参加者たちは感慨深く見つめていました。

電子絵灯篭の絵の差し替え作業

絵、書、表情豊かな絵柄が並んだ

「多くの犠牲者のために、
これからも」と
話す佐宗さん

この先も絶やしたくない閖上追悼のあかり

3.11閖上追悼イベント実行委員会事務局 佐宗美智代さん

「閖上では、土地をかさ上げして市街地を再建する事業が昨年から始まっていて、被災した閖上小学校と閖上中学校の校舎は解体されます。光の道として電子絵灯篭を飾ってきた閖上五差路から日和山に至る道路も工事区域となります。小学校・中学校の前で祈りを捧げ、光の道を追悼のあかりの道としてきましたので、それがなくなると思うと残念でなりません。今年の3月が今のやり方でできる最後の機会となりました。ただ、全国の方がこの追悼の行事をやめないで、と応援してくださいます。どうにかして続けたいと私たちも考えているところです」

静岡県沼津市
杉山まゆ美さん(41)

風化させないためまずは行動を

地元で行われているボランティアツアーに参加し、閖上には何度か来たことがありました。今は仮設住宅に花を植えるなどの活動をしています。絵灯篭の組み立てはいろんな人の思いに触れることができるためとても楽しく作業できました。大事なのは行動すること。これからもさまざまなボランティアに参加し、風化させないよう努めていきたいと思います。

仙台市青葉区
奥崎ひろみさん(47)
琉那さん(14)

大切なのは、実際に足を運ぶこと

宮城県農業高校の生徒さんたちなど、普段聞くことのない現地の方々の生の声を聞くことができたのがとても印象的でした。住んでいるところからは近くても、その場所に行ってみないと分からないこと、実感できないことというのはたくさんあります。子どもと一緒に考えていくためにも、今後このような機会があったらまた参加してみたいです。

生命保険協会宮城県協会
小座間宏さん

企業として、個人として 被災地の役に立ちたい

県内の他の地域に比べ、閖上は復興が遅れていると聞きます。今回は宮城県農業高校の生徒さんたちや現地の方々のお話を聞き、閖上にはまだ多くの支援の手が必要なのだと思いました。絵本や福祉巡回車の寄贈など、企業としてできる取り組みは今後も継続していく予定です。また一個人としても、被災地に対し何かの役に立ちたいと考えています。

みんなで作った絵灯篭で3月8日、11日に追悼行事

「3.11閖上追悼イベント2015」が、3月8日閖上小学校会場で、3月11日閖上中学校会場で、それぞれ開催されました。8日は、閖上小学校校庭に絵灯篭のほかキャンドルを灯し、閖上五差路から日和山に続く約1.2kmに絵灯篭による光の道ができました。11日は、閖上中学校北側で絵灯篭を灯し、中学校から閖上公民館跡地まで光の道をつくりました。

閖上小学校校庭に灯された絵灯篭

今回の「今できること」の紙面をPDFで見る