特集/異動続々、受け入れ着々/従業員ケア一層強化
 | セントラル自動車新本社工場(中央やや右下)の周辺では、大規模複合施設などの整備も進む。写真上部は宮城県大和町の住宅地=24日、宮城県大衡村 |
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 | 母子が音楽に合わせて運動やゲームをする子育て支援サークルの催し。セントラル移転などに合わせ、今年から開催数を増やした=20日、宮城県富谷町 |
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 | 高山秀剛さん |
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トヨタ自動車の完成車製造子会社、セントラル自動車(相模原市)の新本社工場が移転する宮城県。来年1月の稼働を控え、従業員の異動が本格化しつつある。移り住むのは家族も含め最終的に約4000人に上るとみられている。工場が立地する大衡村周辺では、家族ぐるみの定住を支援したり、地域振興につなげようとしたりと、さまざまな動きが活発化してきた。
セントラルの新本社工場では7月に入り、生産設備の据え付けがほぼ完了するなど、稼働に向けた準備が着々と進んでいる。 準備作業を支えるのは先行して異動した従業員たち。既に約220人が新本社工場で勤務しており「総合確認」と呼ばれる設備の動作確認作業や、車両の試作に向けた用意に当たっている。 人員は年末にかけて急拡大する。11月には一気に約400人が異動し、工場全体で移転完了時の4分の3に当たる約1000人態勢となる見通しだ。 生産技術部門については既に2009年12月、栗原市の若柳工場に集約された。新たに宮城県に移ったのは約80人で、新本社工場に備え付けられた生産設備の製造を担った。 異動の本格化に伴い、重要性を増すのが従業員に対するサポート。同社は社内に「移転支援室」を設け、専従の7人が移住などに対する不安解消に当たっている。葛原徹社長も「従業員のケアが大切な局面になってくる」と強調する。
◎定住支援策/生活情報や育児重視
周辺の自治体は、セントラル従業員と家族の大規模な移住を人口増につなげようと定住支援策を展開している。 大崎市は昨年4月、JR古川駅に「おおさき移住支援センター」を開設した。3人のスタッフが大崎地域の不動産情報、学校や病院などの生活情報を提供する。 今年6月までにセンターを訪れたのは、セントラル関係者以外も含め約1700人に上る。紹介した住宅などの物件のうち売買は4件、賃貸は約400件が成約に至ったという。市観光交流課は「今後もソフト面の支援に力を入れる」と話す。 多賀城市は昨年、「セントラル自動車従業員住宅サポート事業」を始め、登録した不動産業者の住宅情報をホームページで公開する。大衡村や美里町は住宅新築に対する補助制度を設けている。 従業員家族の子育て支援に取り組むケースも。大和町は4月、子育て支援班を設置し、民間ボランティアが運営する子育てサロンをサポートする態勢を整えた。同様のサロンを開く富谷町社会福祉協議会は「今後は転居ママの支援にも力を入れていきたい」と語る。
◎不動産商戦/「30分圏内」PR懸命
従業員向け住宅の販売をめぐる不動産業界の争奪戦も熱を帯びる。仙台圏北部を中心に、大崎市や利府町など工場まで車で30分圏内の住宅団地が売り込みに必死になっている。 工場に近い大和町中心部の住宅団地「まほろばタウン吉岡みなみ」(790区画)。販売する吉岡南第二土地区画整理組合は、団地を訪れたセントラルなど進出企業の従業員限定で5000円分のガソリン券を贈るサービスを実施し、15区画がセントラル従業員に売れたという。 東北ミサワホームは3月、仙台市泉区北高森の「オナーズヒル北高森」(117区画)を完成させた。建売住宅に電気自動車向け200ボルトの外部電源を付けるのが特徴。同じ泉区ではトヨタホームとうほく(仙台市)も将監殿で「泉ホビーフィールズ」(47区画)の販売を開始。両社ともセントラルと関連企業の住宅ニーズを当て込む。 大和町など地元の不動産会社も単身赴任者用に賃貸物件を盛んに売り込む。黒川郡4町村の18社でつくる「くろかわ住宅情報バンク」の担当者は、「賃貸は500近い空き物件がある。仙台より月1万〜2万円安い家賃をアピールする」と話す。
◎地域活性化/大規模施設、整備進む
セントラルの移転は商機にもなる。新本社工場周辺では大規模開発の動きも出てきているほか、地元の団体が商業を中心に地域活性化策を探っている。 開発が進むのは、大衡村のセントラル新本社工場の向かい。不動産会社の山一地所(仙台市泉区)が開発主体となり、約2万7000平方メートルの土地でホテルや温泉施設、野菜の直売所などを備えた大規模複合施設の整備計画を進めている。 来年秋のオープンを目指し、今年9月には温泉施設の掘削手続きに入る。渡部志朗社長は「仙台から誘客すれば年間利用者30万人は可能」と見込む。 地元の商工団体が移住者に寄せる期待も大きい。古川商工会議所商業部会は共通ポイントカードの導入を準備中で、商店街に工場勤務者を呼び込む戦略だ。 くろかわ商工会大衡支部は近く、自動車産業が集積する岩手県金ケ崎町を視察予定。担当者は「発展のヒントを見つけたい」と意気込む。
◎セントラル自動車労組委員長・高山秀剛さんに聞く/安心感生んだ熱烈歓迎
相模原市から宮城県へ、従業員がそっくり動くセントラル自動車の本社工場の移転。大半の従業員は当初、移住に難色を示したという。不安を和らげたのは誘致を懸命に働きかけた宮城県の対応だった。移住に関する条件整備などを会社と協議してきたセントラル自動車労働組合(組合員約1300人)の高山秀剛委員長に、これまでの取り組みや今後の抱負を聞いた。 ―移転計画を従業員はどう受け止めたか。 「計画の正式発表があったのは2007年10月。それまでも移転はうわさされていたが、同じ相模原市内だろうとみられていた。それが宮城県に決まり、現場に動揺が広がった」 ―労組の対応は。 「移転の賛否を問うのではなく、全従業員が家族と一緒に宮城に行くことを目標に据えた。計画発表直後に会社と条件面での交渉に入り、09年1月に移転支援策の詳細が決定した」 「最大の懸案はやはり住居関連。自宅の売却、購入、賃貸に関する金銭的支援で、ほぼ満額の回答を得られた」 ―従業員の9割が移住する見通しになったと聞く。 「相模原を離れることに消極的な雰囲気が変わったのは、08年3月に始まった家族帯同での現地説明会だった。宮城県庁で村井嘉浩知事に握手で迎えてもらい、周辺自治体の担当者から大量のパンフレット類を頂いた。地元の熱烈な歓迎ぶりを実感できた」 ―年内には新本社工場が1000人近い態勢になる。 「単身赴任を検討していた従業員から、家族での引っ越しを相談されるケースが増えてきた。宮城県内での住居購入も100件を超えている。多少の負担を背負ってでも、新天地に懸けようという意気込みが強まっていると感じている」 ―今後の抱負は。 「私たちに安心感を与えてくれた地域の方々に恩返しするため、まずは新本社工場への生産移管作業を成功させることが最低の責務。地域の期待に応えられるよう、会社と現場が一体となって頑張っていきたいと思っている」
<たかやま・しゅうごう>東京工科専門学校卒。95年セントラル自動車入社。品質保証部で新商品の機能向上などに従事した後、02年から労組専従。上部団体役員、書記長を経て08年9月から委員長。東京都出身。37歳。
2010年07月29日木曜日
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