<原発避難訴訟>「ふるさと喪失」考慮

 17日の前橋地裁判決は、国と東京電力が対策を怠ったために事故が起きたとする「人災」の側面を強調し、事故は防げなかったとする国や東電の主張をことごとく退けた。その上で「事故により平穏な生活が奪われた」との原告の主張を認め、国が定めた指針とは異なる独自の枠組みを採用して賠償を命令。「ふるさと喪失」など5項目の要素を掲げて原告ごとの慰謝料額を判断した。

 東電は事故後、「過失の有無」にかかわらず電力会社が賠償責任を負うとした原子力損害賠償法に基づき賠償金を支払っている。このため訴訟でも「原告が主張する民法上の過失の判断は必要ない」と主張していた。
 判決はこの点について、民法に基づく賠償請求はできないとした一方、「事故を予見でき、対策を取れたか」どうかについては、慰謝料の額を考えるときの要素になるとして、実質的な「過失」の有無を検討した。
 そして、東電は敷地が浸水するほどの巨大津波が襲来する危険性を「2008年には実際に予見していた」と言及。簡単な対策で事故を防げたのに、安全より経済的合理性を優先させたとして責任を認め、慰謝料増額の要素になるとした。
 さらに判決は、国の責任を検討。国は東電に対し、規制権限を十分に行使することが「強く期待されていた」にもかかわらず、事故を防ぐ対応を取らなかったとして「著しく合理性を欠き違法だ」と批判し、「規制権限はなかった」とする国の主張を切り捨て、国家賠償法に基づき慰謝料の支払いを命じた。
 避難者は、放射線への恐怖から避難するとの判断には合理性があると主張。東電と国は、健康被害が生じる科学的証明はないと反論していた。判決は、科学的に明らかであることまでは必要ないが、単なる不安感を超えた危険を感じ避難したかどうかが重要だとの見方を示した。
 これを踏まえ、国の不完全な情報提供による高線量地域への避難や、避難による失業の有無などに応じて個別の慰謝料を算定した。


2017年03月18日土曜日


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