<原発避難訴訟>少しだけ希望見えた

判決後に開かれた集会で話す原告の丹治さん=前橋市

 東京電力福島第1原発事故で福島県から群馬県に避難した137人が損害賠償を求めた訴訟で、東電と国に「過失」責任があったと認めた17日の前橋地裁判決。原告は「他の訴訟につながる大きな一歩」と評価する一方、慰謝料が大幅に減額されたことについては「避難の苦しみや悲しみに対する慰謝料として不十分だ」と落胆が広がった。
 判決後、弁護団の鈴木克昌団長は「東電と国の責任を同等に認めた判決の意義は大きい」と強調。原告の一人でいわき市から自主避難している丹治杉江さん(60)は「後ろ指を指されて辛かった6年間。東電と国の責任が認められ、今は少しだけ希望が見えた」と安堵(あんど)の表情を見せた。
 ただ、原告137人が請求した15億700万円の慰謝料のうち、認められたのは3%に満たない3855万円。原告の半数が請求を退けられ、原告からは不満の声が上がった。
 妻と障害のある子どもと3人で郡山市から自主避難した松田健宏さん(38)は、子どもに対する慰謝料請求が棄却された。「何も分からず避難を余儀なくされ、一番苦しい思いをしたのは子どもなのに。悔しい気持ちが99パーセントだ」と怒りの声を上げた。
 旧避難指示区域から今も避難を続ける女性(63)は「見知らぬ土地に逃げ、周囲から意地悪もされた。賠償額はそうした経験に見合っていない。納得できる判決を勝ち取るまで闘う」と涙声で話した。

◎踏み込んだ内容

<除本理史大阪市立大大学院教授(環境政策論)の話>
 東電が短期間で安価な対策を行えば事故を防げたことや国が規制権限を行使しなかったことなどを認めており、かなり踏み込んだ内容だ。責任論は全国の訴訟にも波及する可能性が極めて高いだろう。一方で損害の認定額は低額で、避難者の思いとギャップがある。避難区域外から自主避難した人々に対する損害は従来より広く認めているが、せいぜい数十万円。区域内のような賠償は認めないというスタンスで、損害論では原告側がほぼ負けた判決だ。

◎国の責任を重く

<立命館大法科大学院の吉村良一教授(環境法)の話>
 福島第1原発の事故に関して、東電は無過失ながら住民への補償をし、国がそれを支援するという従来の賠償の仕組みに、疑問を投げ掛ける画期的な判決だ。津波の予見可能性など東電の責任をはっきりと認め、規制権限を行使しなかった国の役割も「補充的とはいえない」とし、連帯責任を指摘している。国策として原発を推進した背景もあり、水俣病やじん肺などを巡る過去の国賠訴訟より、被害を防げなかった国の責任を重く捉えたといえる。


2017年03月18日土曜日


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