化学物質の扱い方/正しく理解し活用を

寺田眞浩教授

 東北大のサイエンスカフェが6日、「取説(とりせつ)『カガクブッシツ』〜正しく知ろう化学物質〜」をテーマに、仙台市青葉区のせんだいメディアテークであった。東北大大学院理学研究科の寺田眞浩教授が、化学物質への偏見や正しい理解の仕方などについて解説した。

◎講演/工夫し生活を豊かに/寺田眞浩教授・東北大大学院理学研究科

 化学物質は分野や文脈に応じて、さまざまな意味で用いられている言葉だ。寺田教授は「メディアで扱われる場合は人工的に合成した物質で、天然物に対する概念として用いられることが多い。得てして自然にないもので身体に悪いというイメージが持たれている」と語った。
 最初に寺田教授は化学物質に対する偏見を明らかにするため、水を例に挙げて話した。水も水素と酸素の化合物でDHMOと表記されるという。水は生きていく上で不可欠なものだが、(1)強い温室効果があり、地球温暖化の原因になっている(2)多くの金属を腐食、劣化させる−など危険な側面もあることを示した。
 「水は化学物質ではなく、安全なもの」。一般の人が漠然と抱いているこんなイメージを覆した上で「化学物質の善悪は単純に割り切ることはできない」と強調した。
 水道水の塩素消毒を巡りペルー政府が1991年、次亜塩素酸イオンが有機物と反応して発がん性物質になるとの判断から水道水の塩素殺菌を中止した事例も紹介した。
 その結果、塩素消毒を止めてから、約1カ月でコレラ患者が増え、死者が1万人以上も出たのではないか−との説も報告した。寺田教授は「リスク評価を誤った典型的なケースかもしれない」と述べた。
 さらにカフェインやニコチンなど嗜好(しこう)品にも言及した。「人体に良いものではない」と断りつつ、過剰な摂取量で行われた動物実験のデータについては疑問視した。
 寺田教授は「通常の摂取量とはかけ離れた動物実験では人体への影響について、本当のことは分からないと思う。化学物質の危険性は量の問題抜きで語れず、動物実験による化学物質への誤った情報がまことしやかに語られていることもある」と話した。
 最後に、胎児の四肢発育不全を引き起こす薬害が深刻な問題となったサリドマイドについて触れた。現在は妊婦への誤投与を避けるよう厳重な安全管理に基づき、日本でも自己免疫疾患や多発性骨髄腫などの治療薬として使われているという。
 寺田教授は「生活を豊かにするためには、化学物質がもたらすメリットも評価し、それを最大限に引き出した方がよい。さらにデメリットをなるべく少なくする工夫が必要だ」と結んだ。

<てらだ・まさひろ>東京工大大学院理工学研究科化学工学専攻博士課程中退。同大工学部化学工学科助手、東北大大学院理学研究科化学専攻助教授などを経て2006年度から現職。専門は有機合成化学。東京都出身。52歳。


2016年07月23日土曜日


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