知的コンピューティングが拓く医療の世界/手術のリスクを軽減

張山昌論教授

 東北大のサイエンスカフェが1月13日、「知的コンピューティングが拓(ひら)く医療の世界」をテーマに、仙台市青葉区のせんだいメディアテークであった。東北大大学院情報科学研究科の張山昌論教授が、コンピューター技術を活用した外科手術支援システムの研究を紹介した。

◎講演/最適な切除範囲算出/張山昌論教授・東北大大学院情報科学研究科

 張山教授は冒頭、外科医を志望する医学生が近年激減している実態を指摘。背景には勤務時間の長さや医療事故のリスクが存在するという。こうした状況を考慮し、医師の負担軽減と手術の安全性向上に役立つ情報処理を目指していることを説明した。
 外科医の勤務が長時間に及ぶのは、手術の長さに加え、プランニング(手術計画の策定)に時間がかかることが大きい。
 例えば内蔵の腫瘍を切除する場合、医師はコンピューター断層撮影(CT)の画像を見て腫瘍や血管の位置を診断し、どこをどう切るかを判断しなければならない。
 しかし、血管は複雑な3次元構造のため人間では認識しにくい部分があるほか、腫瘍の形状もさまざま。特に肝臓は門脈、動脈、静脈の3種類の血管が入り組んだ最も複雑な臓器であり、腫瘍切除は非常に難しい。
 また、再発リスクのある部位は全て切除することが望ましいものの、患者の負担を抑えるには切除範囲を最小化することが必要になる。
 医師のスキルや経験・勘に頼ると、場合によっては切除する大きさが過大だったり過小だったりする可能性がある。支援システムを使うことでより早く正確にプランニングすることを目指す。
 (1)腫瘍は最も距離の近い血管から栄養を取って成長する(2)再発する恐れがあるのは血管の下流方向の「支配領域」となる−といった医学的な知見を反映しながら、血管や腫瘍の位置を抽出し、最適な切除範囲を計算する。患者それぞれの状態や腫瘍の性質なども加味して算定することができる。
 この技術は既に一部医療現場で手術計画の適正さをチェックするのに使われているという。
 加えて、張山教授は手術中に拡張現実(AR)の技術を用いた眼鏡型端末を医師に装着してもらい、患部を見ながら切除範囲の情報を確認できるシステムの開発を進める。DNAの塩基配列を解析する専用コンピューターの研究などにも取り組んでいる。
 張山教授は「知的処理を実現するプログラムだけでなく、超高速・低消費電力のコンピューターそのものの開発を行っている。『計算の力』で人を幸せにできるよう、本格的な実用化に向けてさらに研究を進めたい」と述べた。

<はりやま・まさのり>東北大大学院情報科学研究科博士課程後期修了。同研究科助手、准教授を経て2016年8月から現職。専門は情報科学。青森市出身。47歳。


2017年01月28日土曜日


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