気になる症状 すっきり診断(20)顎の関節や筋肉の痛み

イラスト・叶  悦子

◎放置で口の開閉困難に/咬合回復科科長佐々木啓一教授

 口の中や上下の顎周囲の顔面部に生じる痛みは「口腔顔面痛」と呼ばれます。虫歯や歯周病による歯の痛みをはじめ、さまざまな原因によるものが含まれます。今回は顎の関節とその周囲の筋肉に痛みを生じる代表的な病気「顎(がく)関節症」を紹介します。

<「円板」ずれ変形>
 咀嚼(そしゃく)や発音の際、私たちは左右一対の顎関節を中心に下顎を動かして、口を開けたり閉じたりします。この動作は下顎に付着する「咀嚼筋」の働きによりもたらされます。咀嚼筋には、噛(か)むと頬が膨れてくる咬(こう)筋、こめかみの所の側頭筋などがあります。上下の歯で噛み締めたり、歯ぎしりしたりする際は咀嚼筋が大変に強い力を発揮します。
 顎関節症はこれらに関わる部分の障害です。開口、咀嚼時だけでなく何もしなくても顎関節や咀嚼筋が痛い、開閉口時に顎関節でポキッ、バキッなどの雑音が生じる、大きく口を開けることができない−といった症状が現れます。症状の程度は患者さんによりさまざまですが、日本では10人に1〜2人程度に顎関節症の症状がみられるとされています。
 原因としては、持続的に噛み締める、不自然な位置で無理に噛むなど、異常な動作が疑われます。これら動作は無意識に行われていますが、特定の筋には負担が掛かり、その結果、筋の痛みが生じます。異常な噛み締め時には顎関節にも過大な力が加わるため、顎関節部の組織が傷つき痛みを発します。これらの痛みにより十分に口を開けられなくなります。
 顎関節は、頭の骨と下顎の骨の間にあって、内部に関節円板というクッションのような構造体を有します。この円板が前方あるいは側方にずれてしまうと、口の開閉時に引っ掛かって雑音を生じます。この状態では一般的に痛みはそれほど強くないのですが、長く放っておくと円板が次第に変形し、引っ掛かりが大きくなります。すると関節が十分に動かない状態に陥り、1〜2センチしか口を開けられなくなることがあります。この時、関節には強い痛みが生じます。
 また、顎関節に過大な力が長期間加わっていると、円板がすり減ってガサガサという雑音が発生したり、顎関節の骨そのものがすり減って変形したりすることがあります。

<治療、体に優しく>
 症状がひどくなると治療にも時間がかかります。症状が気になった時には早めに歯科を受診し、診断を受けることをお勧めします。一般の歯科で手に負えない場合は、私ども専門医に紹介されます。
 顎関節症の治療は、症状が多岐にわたるためさまざまな手法が用いられます。痛み止めなどの薬の処方、マッサージ、口を開く訓練、噛み締め癖を止める訓練のほか、マウスピースで顎の位置を修正するなど、体に優しい治療が主体です。


2017年12月15日金曜日


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