<ツール・ド・東北>サイクルツーリズム 先進地に学ぶ

守山市が昨年度から取り組む「漁船タクシー」の社会実験。湖上を移動して走行距離を縮めることでビワイチを気軽に楽しめる=昨年12月、滋賀県高島市の大溝港
ビワイチの拠点となっているジャイアントストアびわ湖守山。自転車購入だけでなく、メンテナンスや情報収集など多様な客でにぎわう
琵琶湖大橋の景観スポットから雄大な湖を眺めるサイクリスト

◎ぐるり一周200キロ「ビワイチ」人気/守山市の場合

 自転車で観光地を巡る「サイクルツーリズム」が全国各地で盛り上がりを見せる。ツール・ド・東北の会場となる石巻、気仙沼、女川、南三陸の2市2町でも動きが出始めた。先進地の一つ、滋賀県の琵琶湖を一周する「ビワイチ」では、守山市の特色ある取り組みが注目を集める。ツーリズム振興へ、自転車愛好家の市長が先頭で駆ける守山市を訪ね、ツール・ド・東北開催地の未来図を探した。

 守山市は琵琶湖大橋があり、多くのサイクリストが湖を一望できる景観を求めて行き交う。ビワイチを地方創生に生かそうと、市は昨年度から取り組みを本格化させた。
 自転車を船に乗せて湖を渡り、ルートを短縮する漁船タクシーの社会実験を昨年11月に始め、今年は7〜11月に運航する。
 8万円以上のスポーツ用自転車なら購入費を2万円まで助成する制度を開始。ビワイチ用のレンタサイクル事業にも乗り出した。
 市政策調整部の山形英幸次長は「観光振興策を進めると同時に、地元市民にも楽しんでもらいたい。自転車利用者の裾野を広げたい」と話す。
 大学で自転車部だった宮本和宏市長の思い入れの深さが原動力だ。トップセールスで、台湾の世界的な自転車メーカー「ジャイアント」との連携を実現。3月にストアがオープンした。ビワイチを紹介するコーナーを設け、自転車の貸し出しや情報発信も担う。
 ストアはサイクリングルート沿いのホテル「ラフォーレ琵琶湖」の1階にあり、宿泊施設との相乗効果も狙う。
 ジャイアント広報担当は「守山市の熱意とホテル側の尽力で開店できた。商品構成は初心者向けが主眼。スポーツサイクルではなくサイクリングを売る理念を体現した」と話している。
 県内の自転車や環境関連の団体でつくる輪の国びわ湖推進協議会も守山市に拠点を置く。ビワイチのマップ作成やホームページ運営、公式ガイドブック「びわ湖一周自転車BOOK」を刊行し、自転車人口の増加を目指す。
 一周の認定証の年間発行数は5年で3倍に増えた。事務局長の佐々木和之さん(43)は「守山市などの活動が報道で知られるようになった昨年暮れから空気が変わった。ビワイチで自転車の楽しさを知ってほしい」と手応えを口にする。

◎守山市長 宮本和宏さん/世界からサイクリスト呼び込みたい

 −サイクルツーリズムをはじめ自転車関連の施策に着眼したのはなぜか。

 「守山市は市街地の高低差が少なく、自転車での移動に適する。ビワイチのシンボル、琵琶湖大橋のたもとにあり、立地特性を生かした観光振興を地方創生の軸に位置づけた」
 「大学の自転車部でテントや鍋を積み、旅をした。自転車は健康的で環境に優しい。自然と仲間も増える。素晴らしい乗り物。琵琶湖の変化に富む景色は車ではじっくり見られず、歩くには長い。市民も安全に楽しめる環境づくりと、市外から繰り返し訪れてもらえる観光振興の両面で自転車施策に取り組んでいる」

 −サイクルツーリズム活性化に重要なことは何か。

 「守山だけでは限界がある。県や周辺自治体と同じ方向を向くことが大切だ。知事や近隣の市長とサイクリングをして素晴らしさを共有している。県と大津市など1県4市の共同事業で国の交付金を受けた。広域レンタサイクルや自転車搭載の湖上交通整備に連携して取り組んでいる」
 「ジャイアントとの連携を目指し、日本法人に何度も通い、本社がある台湾も訪ねた。ストア進出に結び付いたのは、自転車に懸ける情熱や心から楽しんでいる姿を伝えることができたからではないか」

 −発展に向け次の手は。

 「いずれは琵琶湖に面する自治体全てで連携したい。サイクルロード沿いに飲食や休憩の施設がほとんどない。地元のグルメでおもてなしの心を感じてもらえるように整備したい」
 「多言語対応を進め、自転車が盛んな台湾をはじめとしたインバウンド(訪日外国人旅行者)誘客に力を入れる。関西空港や中部空港からアクセスしやすく、京都や大阪に近い強みを生かし、世界中からサイクリストを呼び込みたい」

<みやもと・かずひろ>大阪府枚方市生まれ、東大工学部卒。国土交通省住宅局建築指導課長補佐などを経て2011年2月から現職。現在2期目。44歳。

◎ツール・ド・東北 足達伊智郎事務局長/トップの熱意 成功の鍵

 ツール・ド・東北の舞台となる三陸で、サイクルツーリズムの振興を図るには何が必要か。
 大会事務局長の足達伊智郎さん(41)=ヤフースポーツ事業推進室長=は「ビワイチの守山市、瀬戸内しまなみ海道の愛媛県のように自治体トップの熱意が成功の鍵になる」と話す。
 ビワイチ、しまなみの地元と協力するジャイアントは、大会でテクニカル・サプライヤーパートナーを務める。宮城県内への直営店開設も検討されている。
 「民間がノウハウを持つブランド化や情報発信などで地元の取り組みを支えたい。三陸には大きな可能性がある」と足達さん。官民連携でサイクルツーリズムの推進を目指す。

<ビワイチと守山市>ビワイチは、琵琶湖畔の道路約200キロを一周するサイクリングルート。昨年は約5万4000人が一周したと推計される。琵琶湖大橋を境に北湖一周約150キロのルートの人気が高い。守山市は人口約8万2000人。JRで京都駅に約25分、大阪駅に約55分と近く、ベッドタウンとして人口が増え続けている。


2016年09月11日日曜日


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