<ツール・ド・東北2017>官民が連携地域の誇りに

瀬戸内の島々を結ぶしまなみ海道。国内外から多くのサイクリストが訪れる=愛媛県今治市

 東日本大震災で被災した宮城県沿岸を自転車で巡るツール・ド・東北2017が、9月16、17日に開かれる。震災からの復興を支援する大会は今年で5回目。自転車への理解は徐々に広がり、観光を融合させたサイクルツーリズムの具体化への期待が高まる。環境整備の機運も醸成され、関係者は「今年をサイクルツーリズム元年に」と意気込む。各地の取り組みや先進地の事例を紹介する。(ツール・ド・東北取材班)

◎発進 サイクル観光(下)先進地に学ぶ

 瀬戸内海をまたいで本州と四国を結ぶ本四架橋の3ルートのうち、西端の尾道(広島県)−今治(愛媛県)ルートは、瀬戸内しまなみ海道(西瀬戸自動車道)としてサイクルツーリズムの最先端を行く。
 全長約70キロ。八つの島をつなぐ9本の橋は生活道路の役割も担い、自転車と歩行者、バイクの専用道が併設された。景観、文化、食を楽しむ国内外のライダーが訪れる。
 今治市のレンタサイクルターミナル「サンライズ糸山」。8月初旬、広島県側から走破した神奈川県の会社員渡辺淳さん(58)は「有名なルートを一度走ってみたかった。眺望が良かった」と汗を拭った。

<SNSが後押し>
 愛媛県によると、2015年度の自転車通行量は推計32万台。県観光課は「年間81万人が訪れる道後温泉と並ぶコンテンツに育ちつつある」と手応えを語る。
 今や「聖地」だが、決して右肩上がりではなかった。自転車利用者は1999年の全通後しばらく低迷。2010年に当選した中村時広知事が、しまなみ海道の観光振興に力を入れ、東日本大震災後の自転車ブームと相まって増加に転じた。
 愛媛県は民間や広島県と連携し、空気入れなどを配置した休憩所「サイクルオアシス」に商店や民宿などを選定。しまなみ海道のほかに県内25コースを設定し、ルートが分かるよう路上に青い線を引くなど受け入れ態勢を整えた。
 こうした取り組みを後押ししたのが会員制交流サイト(SNS)。ライダーがインスタグラムなどに投稿する美しい景色は瞬く間に広がり、12年度から利用者が急増。海外からの集客にも一役買う。
 並行して行ったのが安全対策だ。「同時にやらないとツーリズムは生まれない。観光振興ばかりでは、うまくいかない」。愛媛県自転車新文化推進室の坂本大蔵室長は強調する。
 県は13年、自転車安全利用促進条例を制定。「シェア・ザ・ロード」を掲げ、自転車や歩行者、車との共存の考えを広めた。県立学校の通学生徒にはヘルメットの着用を義務付けた。
 当初は歓迎しない住民もいたが、自転車への理解は徐々に広がった。お遍路さんをもてなす伝統を背景に、地域全体で受け入れる態勢が形成された。

<課題は2次交通>
 課題はライダーの2次交通の確保。自転車ラック付きバスなどを増やし、ルート選択の幅を広げていく考えだ。今治市観光課の渡部誠也課長補佐は「努力を怠ると、足をすくわれる。細かいニーズを拾いたい」と気を引き締める。
 サイクルツーリズムを地域づくりに生かすNPO法人シクロツーリズムしまなみ(今治市)のガイド宇都宮一成さん(49)は言う。「住民が地元に自信を持ち始めた。プライドを与えてくれた。これが自転車の力だ」。自転車は通勤、通学の道具という枠を超え、地域に定着しつつある。


2017年08月26日土曜日


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