<アングル岩手>息の合う夫婦鍛冶 港町、道具で支える 大船渡

呼応−夫婦ならではの「あうん」の呼吸で真っ赤に焼けた鉄に向かう。「鍛冶屋の仕事はスピードが勝負。1人じゃできないことも多い」と勝男さん=大船渡市の菊三鍛冶屋

 火花を散らせながら、カーン、カーンという盛大な金属音が響く。江戸時代から続く大船渡市の「菊三鍛冶屋」。6代目の新沼勝男さん(74)と妻の正子さん(69)が呼吸を合わせ、真っ赤な鉄を鍛える。
 港町だから漁具の注文が多いが、包丁や草刈り鎌、とび口なども作る。「うちは何でも作る鍛冶屋。見たことがない道具でも、注文を受けたら作りますよ」と誇らしげに話す。
 東日本大震災の後、再建をあきらめかけた。海沿いの自宅と工場は津波で全壊。勝男さんも大病をしたが、道具を流された漁師から依頼が相次ぎ、また仕事に戻った。
 昔ながらの腕の確かな鍛冶屋さんの評判は広まり、今では遠く県外からも注文が届く。「鍛冶の仕事のおかげで、生きる気力が湧きました。お客さんにも家内にも感謝」。職人の年輪が刻まれた勝男さんの顔が、一瞬赤くなった。(写真部・及川智子)


2018年01月08日月曜日


先頭に戻る