<東北の本棚>被災地の「最後の砦」に

守り抜いた医の灯 福永久典 著

 舞台は相馬市にある公立相馬総合病院。東日本大震災、福島第1原発事故で押し寄せる被災者を受け入れ、地域中核病院として唯一機能を維持し続けた「最後の砦(とりで)」が、この病院だった。医師らの証言をつづった。
 2011年3月12日、福島原発が水素爆発、近隣の病院は次々と入院患者の移送を始めた。公立相馬総合病院は原発から北に40キロの位置にあり、放射線量計測では問題ない値が示された。撤退の場合は自衛隊支援が確約されていると訓示。「私が責任を持つ」という病院長の言葉で始まった。
 「薬がない」。他の病院の患者も押し寄せた。パニックのさなか、一人一人に「どの薬を、どの分量で」と医師、薬剤師は奔走する。自らも被災者でありながら病院に残った看護師たち。食料の確保では、近隣の農家が自発的に食材を差し入れた。逆境の中で奮闘した医師、職員、地域の人たちの姿が描かれている。
 著者は1984年神奈川県藤沢市生まれ。震災後、研修医として公立相馬総合病院に2年間勤務した。故郷に帰還できなかった福島県飯舘村の患者や津波で妻を失った高齢男性との触れ合いなど、研修医時代の体験もつづる。
 東北大加齢医学研を経て現在、英国で放射線医学を研究している。
 河北新報出版センター022(214)3811=1296円。


2017年09月10日日曜日


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