<東北の本棚>不毛な対立が悲劇生む

幕末・維新と仙台藩始末 千葉茂 著

 歴史上の敗者は賊軍とされ、忘れ去られる。宮城県内で高校長を務めた著者が、戊辰戦争で敗者となった仙台藩の対応を検証。忘れてはならない真実に迫った。
 1868年、薩長同盟による新政府は仙台に奥羽鎮撫(ちんぶ)総督府を設け、各藩に会津藩の討伐を命じた。仙台藩の奉行但木(ただき)土佐は表向き、攻撃の準備を進めながら会津の降伏を模索した。この動きに激怒し「奥羽は全て敵」とみなした総督府の世良修蔵は仙台藩士に暗殺される。和平工作は頓挫し、但木らは奥羽越列藩同盟を結成する。
 本書は戦争前から仙台藩内で繰り返された対立を詳述する。但木が現実的な開国と朝廷・幕府の融和を模索したのに対し、重臣の遠藤文七郎が尊王攘夷(じょうい)論に固執し、ことごとく反対した。著者は「開国問題を棚上げした国政との間にずれが生じて戊辰戦争の遠因となり、(列藩同盟が)まとまりを欠いて敗北を招いた」と分析する。
 不毛な対立が悲劇につながった。失脚した遠藤らが復権し、但木は逮捕、処刑された。新政府への対応を巡り藩内の対立が再燃。脱藩者が相次ぎ、経済の停滞や中央との格差拡大を引き起こした。
 著者は「地域の殖産興業が制限され、中央による軍事、経済的支配だけが進んだ。現在の地方行政にも中央に追随する気風が残っている」と批判する。
 本書は開国−鎖国、朝廷−幕府などの対立軸を章ごとに図式化して全体像を把握しやすくした。副題として但木の辞世の句「雲水の行衛はいつ古(こ)」を引用。開明的な生き方を貫いた人物像に思いをはせる。
 著者は1954年栗原市生まれ。但木の菩提(ぼだい)寺がある宮城県大和町在住。
 創栄出版022(267)5935=1620円。


2017年09月17日日曜日


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