<トモノミクス>被災地発のモデルを

藤沢烈(ふじさわ・れつ)京都市生まれ。一橋大社会学部卒。米経営コンサルタント会社マッキンゼーを経て独立。11年9月、被災地支援を行うRCF復興支援チーム(現RCF)を設立。復興庁政策調査官などを歴任。総務省の地域力創造アドバイザーを務める。41歳。

 東日本大震災直後、無数の企業が被災地支援に没頭した。社会的責任をにじませた行動は、資本主義の新しいかたちを予感させた。震災を境に企業はどう変わったのか。被災地と支援企業の橋渡し役を務める一般社団法人RCF(東京)の藤沢烈代表理事に聞いた。

◎一般社団法人RCF代表理事 藤沢烈氏に聞く

 −震災前後で企業の社会貢献はどう変わったか。
 「経営トップが経営課題として支援に乗り出すようになった。企業の社会貢献部門が対応できるレベルを超えた災害だった。以前はボランティアや寄付が中心だったが、本業を通じた支援が活発化し、産業やコミュニティーの再生により深く多様に関わった」

 −企業の社会的責任(CSR)や共有価値の創造(CSV)という概念が注目されている。
 「CSRは2000年ごろ、黒船のように欧米から輸入された。法令順守や環境問題などに対する社会的責任を果たすこと。国内企業は受け身だった。CSVは本業を生かし(復興など)社会的に価値のある事業を戦略的に手掛ける。震災と同じ頃、米国から発信された」

 −震災でのCSVとは。
 「被災地で企業は直感的にCSVを実践した。輸入型でない『日本型CSV』だ。例えば1次産業の6次化やブランド形成を率先した企業があった。社会貢献が守りから攻めに変わった」

 −支援を続ける鍵は。
 「地域と長く関わる専任者がいたかどうかが大きい。被災地では顔の分かる人間関係が基本。最初から分厚い提案書を出して、相手に敬遠されたケースもある。地域との関わり合いを勉強するいい機会になった」

 −受け入れ側はどうか。
 「企業の考えを理解し、地域に説明する『翻訳者』がいたかどうか。平等性を重視する行政とスピード優先の企業では文化が異なる。需要を見極めるマッチングも大事だ」

 −若い世代でソーシャルビジネス(社会的企業)が盛んだ。
 「かつては会社の成長がそのまま社会の成長につながった。80年代生まれのミレニアム世代は営利目的の企業の姿に限界を感じている。仕事にどんな社会的意義があるのかを問う意識が強い」

 −企業の社会的責任はますます大きくなる。
 「企業が被災地に目を向け、貢献を続けることが非常に重要だ。企業は単なる『復興支援』で終わらせてはならない。岩手、宮城、福島の被災3県が経済力を持ち、活性化することに大きな意味がある」

 −被災地は「課題先進地」と言われる。トモノミクスの芽はあるか。
 「少子高齢化が進み、国内市場が縮小して物が売れない。海外でもいずれ高齢化が進んでいく。被災地で社会課題を学び、解決する。企業は鍛えられ、競争力を身に付ける。被災地発の経済モデルを世界に提示できるはずだ。トモノミクスの姿を探り続けなければならない」(「被災地と企業」取材班)
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 企業の社会的責任(CSR)。21世紀、世界の企業に浸透し始めた概念だ。東日本大震災後、東北の被災地には無数の企業が足を踏み入れ、試行錯誤を重ねた。艱難(かんなん)の地へ、生活の糧を、癒やしを、希望を。企業を突き動かした衝動は何だったのだろう。あれから間もなく6年。CSRを足掛かりに、あの日に返って経済社会を展望する。見えてくる明日を、私たちは「トモノミクス」と呼ぶ。


2017年01月05日木曜日


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