<CSR>企業と地域 共存の道

矢口義教(やぐち・よしのり) 石巻市出身。明大大学院経営学研究科博士課程修了。富山短大講師、東北学院大講師を経て、12年4月から現職。仙台市コンプライアンス推進委員も務める。39歳。

 CSR(企業の社会的責任)と聞いて何を思い描くだろう。「営利企業が社会貢献なんて」「大企業の自己満足」と皮肉る人もいる。東日本大震災からの復興で企業が果たした役割は見過ごせない。CSRは社会課題を解決し、世界を変える力を秘める。

◎トモノミクス 被災地と企業/CSRの意義/東北学院大経営学部矢口義教准教授に聞く

 東日本大震災における企業の取り組みは「復興CSR」として注目された。背景や課題、未来像などについて、東北学院大経営学部の矢口義教准教授(経営学、CSR)に聞いた。

 −復興CSRの特徴は。
 「阪神大震災と違い、東日本大震災では社会と企業双方がCSRを認識していた。被災地以外の多くの企業が金銭的、物的、人的な支援活動を幅広く展開した。取り組みを公表し、戦略的にCSRをした方がいいと考えるようになった」

 −地元の中小企業の動きはどうだったか。
 「大企業は復興支援に関するCSR報告書や広告を出し、明示的だった。地元の中小企業は人的、予算的に限られる。PRに不慣れで暗黙的。それでも自ら被災しながら、地域の再生に決定的な役割を担った」

 −中小企業のCSRで特徴的な点は何か。
 「多くは所有(株主)と経営が一致する。株主と経営者、地域社会の利害は基本的に同じだ。地域が良くなれば、経営も良くなるという論理だ。ただし『する』『しない』は経営者次第。混乱に乗じて便乗値上げなどをする企業もあった」

 −企業側のメリットは。
 「日本企業には『利益を上げ、雇用を増やし、税金を納める。それ以上何があるのだ』という考えがあった。CSRは活動を通し、企業と地域社会を融合させる。地域で認められれば、社会からより高い支持を得て『企業活動に対する正当性』を獲得できる」

 −CSRの課題は。
 「一つは株主に対し『一時的に利益率が下がるかもしれないが、社会との共存を考えて長期的に発展するにはCSRが必要』と説明することが重要だ」
 「もう一つは、経営者の責任あるリーダーシップ。松下幸之助らは『企業は社会の公器。利益が一番ではない』と認識していた。経営者が3〜5年で代わると、リーダーシップが発揮できない可能性がある」

 −震災から6年。今後の展望は。
 「被災地が自立する過程で、大企業はビジネスの性格を強く出すだろう。『社会貢献9割、ビジネス1割』だった割合を変え、企業が十分なメリットを獲得できる活動が必要だ」
 「被災地の中小企業は廃業せず、事業を続けることで被災地を支えた。環境、社会、経済を追求しながら、利益を生む仕組みを目指すべきだ。経営者のリーダーシップ、社会的責任の真価が問われる時代になる」


2017年01月31日火曜日


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