<糸魚川大火>個人事業主ら仮店舗で奮闘

糸魚川駅近くのビルの一室で生徒を教える秋山さん。「教育の力で故郷の復興に貢献したい」と話す

 新潟県糸魚川市の大火は、中心部の商店街で発生した。被災した零細企業や個人事業者は住民の重要なライフラインだった。「客を待たせられない」。経営者らは仮店舗などでいち早く事業を再開し、暮らしと地域経済を支える。

 北陸新幹線糸魚川駅前の学習塾「秋山塾」。小学生から高校生まで通う一戸建ての教室は全焼した。
 「受験の日程は待ってくれない」。経営する秋山泰宏さん(27)は無我夢中だった。教室を休んだのは大火の当日だけ。塾生23人を市内の別の教室に移し、年明け早々に駅近くのビルの会議室を借りた。
 大火の発生は冬期講習の直前だった。受験まで残りわずか。「大事な受験生を預かっている責任がある」。休業日を調整し、冬期講習の全授業をやり通した。
 地元出身の秋山さんは「教育で復興に貢献したい。10年後、20年後の糸魚川をつくる子どもたちに最高の進路を勝ち取ってもらいたい」と決意する。
 出火元は駅北口近くの飲食店だった。周辺には飲食店や銀行、酒屋などが集積する。火の粉が風で運ばれて被害が拡大し、約4万平方メートルが焼失した。
 山岸呉服店は2階の屋根が焼け落ちた。山岸晴美常務が店から必死で持ち出したのは、成人式用の振り袖だった。「お客さまに絶対に迷惑を掛けられない」。残した服は臭いが付き、廃棄せざるを得なかった。
 同市の成人式は5月。3月中旬には新成人が写真を撮影する。心配する予約客に山岸常務は「全て大丈夫です」と努めて明るく答えたという。1月2日に仮店舗で営業を再開。今月3日、従来の店舗に戻った。
 市によると被災した55事業所のうち、飲食店など15店が仮店舗で営業を再開した。復興に向け、地域経済を支えてきた小さな歯車が、焼け跡の商店街で回り始めている。


2017年02月05日日曜日


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