<47プランニング>おいしさで風評払拭

「いわきではおいしい物を食べながら、生産者の思いを知ることができる」。料理に使った地場の野菜を説明する白石さん(右から2人目)=1月下旬、いわき市の夜明け市場

 震災はCSR(企業の社会的責任)に新たな視座をもたらした。主役は自らの社会的存在に覚醒した企業。地域や消費者との共存を探る姿があった。(「被災地と企業」取材班)

◎トモノミクス 被災地と企業[18]第3部 覚醒(5完)おこす

 企業は復興の原動力になれるのか。一滴ずつ石をうがつような取り組みは、間もなく6年になる。
 1月下旬、JRいわき駅前の横町の夜。約40メートルの路地で黄色いちょうちんが揺れ、昭和歌謡が流れる。「復興飲食店街 夜明け市場」の一角で、フランス料理店がにぎわっていた。
 「これは東京電力福島第1原発事故の時、地中深くにあったサトイモを種芋に栽培したものです」
 市内の農家白石長利(ながとし)さん(35)が、料理が載る皿を前に熱っぽく語る。「ソースはうちの長兵衛サトイモで作りました。長兵衛はじいちゃんの名前です」
 飲食店街の運営会社「夜明け市場」が企画した生産者との交流イベント。20人近い客らで店はほぼいっぱいだ。おいしさこそが風評を吹き飛ばす。対話を通し、いわき産の農産物の安全と、食の豊かさを発信した。
 夜明け市場は2011年11月、イベント企画・運営会社「47(よんなな)プランニング」が開設した。「継続的に経済活動ができる復興の拠点をつくる」。いわき市出身の鈴木賢治社長(34)が空き店舗が多かったスナック街「白銀(しろがね)小路」を改装した。
 15店舗中、14店舗が入居し、人通りは震災前に比べ大幅に増えた。県外客が2割を占め、出張客のリピーターも目立つ。
 鈴木社長の幼なじみで「夜明け市場」事務局長の松本丈(たけし)さん(34)は「できることは、まだまだたくさんある」と話し、夜明け市場を足掛かりにした福島再生の可能性を追う。
 47プランニングは今、次の一手を用意している。狙うのはいわきの新たな魅力創出。切り札は、サッカーJリーグ参入を目指す「いわきFC」だ。
 15年発足のいわきFCは今季、県社会人サッカー1部リーグに昇格する。米国の人気スポーツブランド「アンダーアーマー」を日本で展開している「ドーム」(東京)の子会社が運営。チーム理念は「いわき市を東北一の都市にする」。
 ドームは近く、いわき市内にクラブハウス兼商業施設を完成させる。47プランニングは商業施設で飲食店フロアを担当する。東京の老舗飲食店など5店が入り、県産食材を使う予定だ。
 1月、本社を東京からいわきに移した。福島を興す一員として負けられない「ホームゲーム」が始まる。
 鈴木社長は、福島と自社の将来を見据える。
 「被災地の事業はもうからないかもしれない。だが、利益だけで事業を判断するのではなく、社会的価値の有無で決めたい」
 利潤を追求する経済主体として。地域と生きる社会的存在として。東日本大震災をきっかけにした、企業の新しい形が見えてきた。(「被災地と企業」取材班)
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 企業の社会的責任(CSR)。21世紀、世界の企業に浸透し始めた概念だ。東日本大震災後、東北の被災地には無数の企業が足を踏み入れ、試行錯誤を重ねた。艱難(かんなん)の地へ、生活の糧を、癒やしを、希望を。企業を突き動かした衝動は何だったのだろう。あれから間もなく6年。CSRを足掛かりに、あの日に返って経済社会を展望する。見えてくる明日を、私たちは「トモノミクス」と呼ぶ。


2017年02月18日土曜日


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