<JTBグループ>支援と本業 響き合う

鈴木さん(右)の作業を手伝うボランティアツアーの参加者。移ろうニーズを捉えながら、旅行会社は「旅」を復興のエンジンに変える=11日、気仙沼市唐桑

 震災はCSR(企業の社会的責任)に新たな視座をもたらした。主役は自らの社会的存在に覚醒した企業。地域や消費者との共存を探る姿があった。(「被災地と企業」取材班)

◎トモノミクス 被災地と企業[22]第4部 壁(4)つづける

 濃厚なうま味を含む養殖カキが澄んだ海中から巻き上げられた。船上に沸く歓声。乗船客が水揚げされたカキを籠に移していく。
 リアス海岸が連なる宮城県気仙沼市唐桑町鮪立(しびたち)の入り江。東京などから来た18人が11日、養殖業鈴木芳則さん(43)の作業を手伝った。JTBコーポレートセールス(東京)が主催する1泊2日のボランティアツアーの一行だ。

 20回近く参加している埼玉県の会社経営野口友成さん(53)は「地元の人の人柄や生き方にほれた。学びが多く、また来たくなる」と充実した表情を見せた。
 東日本大震災の発生直後、東北の被災地には数万人規模のボランティアが入った。交通機能がまひし宿泊施設が被災する中、足と宿を提供したのが旅行業界による各種ツアーだった。
 同社は2011年5月以降、350回のボランティアツアーを実施した。参加者は延べ1万2000人。ツアーを機に被災地支援を決意した人も多い。
 あの日が遠のく。ボランティアツアーには最盛期のような勢いはない。
 東京電力福島第1原発事故で避難区域となった福島県南相馬市小高区。別のJTBグループ会社が同区で展開したボランティアツアーは昨年4月、中断を余儀なくされた。申込者数が実施基準に満たないことが増えてきたからだ。
 これまで125回開催。5000人以上が利用し、がれき撤去や住宅周辺の竹林伐採に携わった。同区は昨年7月、ほぼ全域で避難指示が解除された。ボランティアの需要は高い。
 復興支援を巡る消費者ニーズは変化する。初めは力仕事を中心としたボランティアに人が集まった。人気は地元との交流が目的の女性限定ツアー、語り部の話を聞く「学び」のツアーへと移った。
 「ツアーの需要は震災直後より減ったが、復興が終わっていない現実をよく知っている」。JTBコーポレートセールス営業第1課の影山葉子マネージャー(47)は冷静に話す。

 同社の復興支援の軸足は変わらない。今、力を入れるのは被災地の観光資源の創出だ。
 13年8月に始まった「東北ふるさと課(化)プロジェクト」。気仙沼市の男山本店が造った地酒を蔵元と一緒に海中に沈め、1年後に引き上げる。サンマ船団を盛大に見送る初出港の行事に住民とともに参加する。キャッチコピーは「また来るね、また来てね」。
 影山さんは「魅力的な観光価値を生み出し、今後も東北に人をつなげたい」と力を込める。
 震災後、多くの企業が復興支援に取り組んだ。継続には本業との両立が欠かせない。時は巡る。復興CSR(企業の社会的責任)が知恵と工夫を呼び覚ます。
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 企業の社会的責任(CSR)。21世紀、世界の企業に浸透し始めた概念だ。東日本大震災後、東北の被災地には無数の企業が足を踏み入れ、試行錯誤を重ねた。艱難(かんなん)の地へ、生活の糧を、癒やしを、希望を。企業を突き動かした衝動は何だったのだろう。あれから間もなく6年。CSRを足掛かりに、あの日に返って経済社会を展望する。見えてくる明日を、私たちは「トモノミクス」と呼ぶ。


2017年02月27日月曜日


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