<E番ノート拡大版>嶋 復帰は万全の状態で

最後まで日本代表に残る道を模索した嶋。左は岸=16日、静岡市の草薙球場

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表は米国で22日に行われる準決勝に駒を進めた。「あの場で一緒に戦いたかった」。右足のけがのため、大会直前に代表を離脱した東北楽天の嶋基宏捕手(32)は今季初実戦出場となった16日の広島戦後、思うように存在感を示せず、この1カ月間抱き続けた苦悩をにじませた。

<「本当は肉離れ」>
 代表のリーダー的役割を求められた。2月の久米島キャンプで痛めた右ふくらはぎは十分に回復しなかったが、小久保監督の期待も受け、縁の下の力持ちとして代表に残ろうとした。結局、再発の恐れがあるため大会直前の壮行試合に出場できず、4日に離脱を公表した。
 「テレビの前で正座して見ている」。代表チームを離れる際、代表メンバーの則本、松井裕の両投手に言い残した。テレビ画面には、ベンチに「SHIMA 37」のユニホームが掲げられている映像が流れた。一緒に戦う気持ちの表れに「うれしかった」。それでも、国民的関心を集める熱戦の場にいない悔しさもあった。「(準決勝以降も)テレビで見ることしかできない。でも、応援したい」
 負傷後、2月下旬からの代表合宿に合流するか否か、心が揺れた。星野球団副会長と1時間以上話し合うと、こう助言された。「辞退だろう。回復が間に合うかは、いい年齢なのだから分かるだろう。最悪の場合、代表とチームと両方に迷惑がかかる」
 辞退を申し出てもおかしくないけがだった。星野副会長は「本当は右ふくらはぎの肉離れ。でも嶋は『下半身の張り』という軽傷として公表した。それほど出たかったのだろう」と明かす。

<まじめな優等生>
 常に目の前のことに全力を尽くし、人一倍使命感が強い嶋。2011年には、「見せましょう 野球の底力を」とスピーチして東日本大震災直後の被災地を背負おうとした。半面、思いが強過ぎるきらいもある。若手時代の恩師、野村元監督はかつて「遊び心があって物事に当たれる『不真面目な優等生』が野球選手には一番向いている。嶋は『まじめな優等生』。窮地で余裕がなくなっちゃう」と評した。
 主力と期待された日本ハムの大谷投手(岩手・花巻東高出)が早々とけがで代表離脱した後で、嶋までが辞退しにくい空気があったのも不運だった。代表、チームの両方にどうしたら責任を果たせるか自問し続け、最後まで最善の回答を模索したのだろう。
 16日の試合後、嶋は31日の開幕戦出場を視野に入れた。献身的姿勢は立派だが、ファンが見たいのは開幕戦出場より、秋に優勝決定の歓喜の中心にいる姿のはずだ。万全の状態で復帰してほしい。(金野正之)


2017年03月18日土曜日


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