<東北を熱くする 追悼星野仙一さん>(8)師 あるべき指揮官像学ぶ

スポーツ紙の表彰式で談笑する星野さん(右)と川上氏(左)。中央は山本浩二氏=1986年11月、東京

 <星野仙一さんは母のおなかにいるときに父を亡くした。おやじと呼ぶのは明治大の監督だった島岡吉郎氏、中日入団時の監督・水原茂氏の2人。師と仰いだのが元巨人監督の川上哲治氏だった>

◎座禅「無」感じる

 中日の監督に決まったとき、川上さんに「おまえ、はかまを持ってこい」と言われた。どこに行くんだろうと思ったら、岐阜の美濃の山奥に連れて行かれた。正眼寺(しょうげんじ)という禅寺で、座禅の修行だったんですよ。巨人の選手でもないのに連れて行ってくれた。
 1週間辛抱しろと言われ、朝3時ごろに起こされ、掃除をして、本堂に行くと大勢でワーワーとお経を読んでいる。お経は分からないし、正座をしていると畳に足は食い込むし、寒くて寒くて。俺は何をしに来ているんだろうと。
 うちの女房が、ものすごくいいはかまを用意したんですよ。絹のはかまを。すると少し動いただけで「シャラシャラ」と音がする。それでお坊さんに殴られる。えらいところに連れてきやがったなと思った。
 ところがずっと我慢して座っていたら、頭の中が真っ白というか無になってくる。不思議ですね。遠くから時計のボーンボーンという音が聞こえたときだけ、「あと1時間くらいで終わりだな」と、われに返り、あとは無になる。座禅とはこういう力があるんだなと感じました。

 <星野さんは、川上氏率いる巨人の10連覇を中日が阻んだときの立役者だ。その星野さんが川上氏に導かれ、指揮官に求められる多くのことを学んだ>

◎通算勝利数超す

 川上さんは本もどっさり持ってくるんですよ。三国志とか韓非子とか、安岡正篤先生の本とか、難しい本ばかり持ってくる。読んでも分かりませんよ。でも川上さんに「おい、どうだった」と感想を聞かれると困るから、遠征のたびに新幹線や飛行機の中で読んで勉強させてもらいました。何度も何度も読んでいたら、何となく分かるような気になる。今では立派な哲学者になりました。
 川上さんがなぜ国民栄誉賞をもらっていないのか。9連覇なんてできませんよ。

 <2013年5月、星野さんは川上さんの監督通算1066勝に並び、超えた。同年9月、東北楽天がリーグ優勝を決めると、川上さんからはがきをもらった>

 「よくこんな弱いチームをまとめてくれたな。日本シリーズを頑張れよ」という内容でした。
 <川上さんは同年10月28日、93歳で亡くなった。東北楽天と巨人との日本シリーズが始まって2日後のことだった>


2018年03月13日火曜日


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