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<準備宿泊>帰ろうにも三重苦 楢葉・波倉地区

除染廃棄物などの仮置き場が広がる波倉地区=福島県楢葉町

 東京電力福島第1原発事故による避難指示解除に向け、全町避難した自治体で初の準備宿泊が行われている福島県楢葉町には、帰町の環境が厳しい地域もある。福島第2原発が立地する北部の波倉地区は、巨大津波と原発事故による複合災害の爪痕がそのまま残る。除染廃棄物の仮設焼却施設なども計画され、帰町の足を鈍らせる。
 「準備宿泊は人ごと。関心はない」。波倉地区の四家徳美さん(55)は話す。津波で両親を失い、自宅も流された。いわき市で避難生活を続け、災害公営住宅の完成を待つしかない。「国は、帰ろうにも家がない人のことを考えていない」
 波倉地区は54世帯のうち25世帯が津波で流失し、8人が犠牲になった。中心部は災害危険区域に指定され、今は除染廃棄物などの仮置き場が広がる。宅地の平均空間線量は毎時0.47マイクロシーベルト(1月末現在)で18行政区のうち3番目に高い。
 福島県会津美里町に避難する大和田信さん(59)は「家は津波被害を免れたが、周りに誰もいない、放射線量も高い、共同アンテナが倒れテレビも映らないでは、宿泊できない」と嘆く。
 国策にも翻弄(ほんろう)された。国は2012年8月、波倉地区を中間貯蔵施設の候補地に挙げた。14年3月に候補を外れ、代わって示されたのが、除染廃棄物などの仮設焼却施設と焼却灰固形化施設の建設計画だった。焼却施設は用地交渉が進む。
 原発事故に加え、中間貯蔵施設の候補地になった影響などで、津波被災者の地区内での防災集団移転は実現しなかった。「津波で家族も家も失った上、国が次から次へと問題を押し付ける。国の姿勢は私たち弱者に寄り添うどころか、懸け離れている」と四家さん。
 波倉は里山に貴重な植物が自生し、海釣りの穴場だったという。大和田さんは「歴史的にも由緒ある土地。みな本当は古里に帰りたいが、避難指示が解除されても戻るのは数世帯だろう」と指摘。「一口に楢葉町といっても地区で状況が異なる。解除を一律に考えるのは疑問だ」と語る。


2015年05月04日月曜日

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