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<かすむ復興>住まい仮修繕のまま/在宅被災者の苦悩(1)/暮らし

津波で窓や壁が壊れた家にベニヤ板を張って生活している遠藤さん宅

<収入は年金のみ>
 風雨にさらされたベニヤ板が1階に打ち付けられたまま、色がくすむ。
 東日本大震災の津波で突き破られた壁やサッシの代わりとしてしのぐ、応急的な措置のはずだった。
 石巻市湊地区の無職遠藤正義さん(72)は、被災した自宅に住み続けて間もなく4年になる。避難生活で体調を崩して入院。退院後に妻礼子さん(67)と自宅2階で暮らし始めた。
 車を津波で失い、抽選で割り振られた仮設住宅は病院などから遠かった。入居を諦めた。
 全壊した家の修理費として用意できたのは、市の補助金など約150万円。台所、居間といった生活に最低限必要な空間に限って直した。支援団体から紹介された大工が格安で作業をしてくれた。他の部屋は今も手つかずだ。
 完全に修理するとさらに300万円が掛かる。「収入は年金頼りで、生活するだけで精いっぱい。自力で直すのは難しい」

<仮設から戻る>
 大街道地区の無職行方璋房さん(76)も在宅被災者の一人だ。自宅は2階の床上約80センチまで浸水した。一時は内陸部の仮設住宅に入居したが、生活環境の変化になじめず、震災があった2011年の終わりには自宅に戻った。
 約150万円を掛けて修理した。水を吸った内壁や天井板ははぎ取り、段ボールで代用した。断熱材も撤去したため、冬は隙間風が吹き込む。室内の気温は零度まで下がるという。住環境は悪化している。
 市の道路事業に伴い、蛇田地区の集団移転地に移ることになった。「住み慣れた場所を離れたくはないが、正直ほっとした気持ちもある」。行方さんは複雑な胸の内を明かす。

<「支援拡充を」>
 石巻市の一般社団法人「チーム王冠」は昨年、市内を中心に在宅被災者約1100世帯を対象に家屋修繕状況を調査した。修理が未完成という回答は4割を占め、そのうち金銭的な理由が6割に上った。
 市は4月、独自の住宅再建補助制度を拡充。半額だった上限100万円の補修費補助率を全額に引き上げた。しかし、王冠の調査によれば、修繕した約400世帯(未完成を含む)の平均修理額は約450万円という。
 伊藤健哉代表理事は「在宅被災者への支援が薄く、被災者間で格差がある。在宅被災者を行政がしっかりと把握しているのかも疑問。実態を調べ、支援を拡充するべきだ」と指摘する。

     ◇

 東日本大震災の発生から5年目となる被災地で、被災した自宅に住み続ける人々が苦しんでいる。仮設住宅などで暮らした被災者に比べ支援の手が届きにくく、「在宅」ゆえの新たな課題にも直面する。当事者からは「置き去りにされている」との声が聞こえる。(震災取材班、石巻総局・高橋公彦)=4回続き


2015年05月05日火曜日

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