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<女川安全協定>宮城県と5市町、揺らぐ信頼

東北電の海輪誠社長(左)と協定書を交わす布施登米市長ら=4月20日、宮城県庁

 東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)の半径30キロ圏に位置する登米、東松島、涌谷、美里、南三陸の周辺5市町と東北電が結んだ安全協定をめぐり、宮城県と5市町の信頼関係が揺らいでいる。原発再稼働に関する地元同意の対象に周辺市町が含まれるかどうか、認識の違いがあらためて表面化したためだ。

<苦労が水の泡>
 「立地自治体の判断で十分だと思う」。村井嘉浩知事は4月27日の定例記者会見で、こう考えを示した。
 協定は同20日に締結された。5市町は同時に県と覚書を交わし、再稼働につながる原発の設備変更時には県を通じて東北電に意見を述べられるようにした。
 発言はそのわずか1週間後。周辺市町の首長会議で幹事を務めた布施孝尚登米市長は取材に「だまくらかしだ。苦労して協定を作り上げたのに…」と不快感をあらわにした。
 周辺5市町は2013年7月、首長会議を設立。同11月の第2回会合では美里、涌谷両町が再稼働の議論に確実に加われるよう、立地自治体並みの権限を担保する「設備変更時の事前了解」を盛り込むことを主張し、議論は紛糾しかけた。
 オブザーバー参加の県は独自集計の資料を示し「全国の原発周辺自治体が結ぶ安全協定に事前了解の権限は入っていない」と沈静化を図った。だが状況は大きく変わらず、首長会議は1年近く開催できずにいた。

<「出発点」強調>
 事態が動いたのが14年秋。県によると「登米市が協定とともに覚書も結ぶことを提案してきた」という。
 再稼働の議論を切り離す苦肉の策だが、5市町は住民の避難計画を作らなければならず、策定作業に不可欠な東北電からの情報提供に重点を置く協定の締結に傾いていった。
 「これがスタート地点」。協定締結式後の記者会見で、首長たちは口をそろえた。今後の再稼働の議論に加わる余地はあるとの意思表示だった。
 村井知事の発言はこうした議論を軽視するように受け取れた。仮に持論の展開であったとしても、いかにもタイミングが悪かった。

<実効性不透明>
 実は再稼働をめぐる首長側の足並みもそろっているわけではない。「われわれには原発や放射能の専門的な知識がない」(佐藤仁南三陸町長)「知見や賠償能力のあるところが判断すべきだ」(阿部秀保東松島市長)などの意見がある。
 東北電が16年4月以降を目指す女川原発の再稼働。周辺市町が関わる余地はどれだけあるのか。
 美里町の相沢清一町長は「知事1人が県としての判断を下すわけではない。30キロ圏の同意も求めていく形になると信じている」と強調。登米市の布施市長は「協定締結時、東北電力社長が(再稼働の際)5市町に配慮する発言をした」と指摘する。
 ただ、頼みの綱となる覚書の実効性は知事発言で一層不透明になった。

<女川原発30キロ圏の安全協定>東北電力が原発の異常発生時に直ちに情報提供することや原発被害への賠償、市町の防災対策に協力することなどを盛り込んだ全13条。宮城県、立地市町が別の安全協定で持つ、原発の再稼働時などの設備変更に了解の有無を与える権限は入っていない。


2015年05月06日水曜日

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