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<被ばく牛>生かす調査中「世界でここだけ」

牛を柵にくくりつけ、採血する研究チームのメンバー

 東京電力福島第1原発事故に伴い避難区域に指定されている福島県浪江、大熊両町で、岩手大と北里大、東北大などの研究チームが牛の被ばく調査を進めている。これまで原発事故と因果関係が認められる病気は確認されていない。原発事故後、多くの牛が殺処分されたが、チームは「被ばく牛を研究できるのは世界でここだけだ」と、避難区域で牛を生かす意味を重く受け止め、研究を続ける。

◎低線量の影響検証

 チームは牛の健康管理と被ばく調査を目的に2012年9月に発足した「原発事故被災動物と環境研究会」。7回目の現地調査となった16、17日の両日、浪江町小丸地区の共同牧場に入った。年間被ばく放射線量が50ミリシーベルトを超える帰還困難区域だが、牛70頭が飼育されている。
 40頭を柵に囲い込み、興奮する牛をなだめながら、血液と毛を素早く採取した。血液中の放射性セシウム濃度やDNA損傷の有無を調べるのが目的だ。
 現在は浪江、大熊両町にある3カ所の牧場で約180頭を研究の対象にしている。これまでの調査で、購入飼料を与える冬場より、牧草を食べる夏場に血液中の放射性セシウム濃度が高くなることや、汚染された水や草を摂取しても一定期間後、体外へ排出されることなどが分かっている。
 十数頭で白斑が確認されているが、過密飼育によるストレスが原因とみている。岩手大の岡田啓司准教授(生産獣医療学)は「町内で放射線量が最も高い小丸地区で白斑は出ておらず、被ばくによる影響と結論付けるのは困難」と説明する。
 県畜産課によると、原発事故当時、原発20キロ圏の旧警戒区域では農家約300軒が計約3500頭を飼っていた。2011年5月、国から県に殺処分の指示が出され、処分が始まったが、一部の農家が強く反発。12年4月、出荷せずに管理を徹底することを条件に継続飼育が認められ、現在は10カ所で、計550頭が飼育されている。
 避難区域で牛を飼い続けることに、県内の畜産関係者の間には「福島の牛に被ばくのイメージが付きまとい、風評被害を助長するのでは」と心配する声もある。岡田准教授は「大型動物の被ばく調査は世界でも類を見ず、利用しない手はない。低線量被ばくが生体にどのような影響を与えるのか、長期的に観察する価値がある」と話している。


2015年05月25日月曜日

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