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<原発賠償と分断>一律終了、理屈通らず

[たんば・ふみのり]2004年3月から福島大行政政策学類准教授。専門は社会福祉論。同大うつくしまふくしま未来支援センターの地域復興支援担当マネージャーとして、福島県大熊町や浪江町などの復興計画策定に携わった。

◎(上)福島大准教授・丹波史紀氏

 東京電力福島第1原発事故の賠償指針などを盛り込んだ新たな福島復興指針が12日、閣議決定された。精神的賠償を一律に延長するなどの新方針をめぐり、避難区域では歓迎と反発が交錯、さらなる地域の分断を懸念する声もくすぶる。賠償と自立に向けた支援はどうあるべきか。専門家ら3人に聞いた。

<不公平感生じる>
 −新たな福島復興指針で賠償格差がさらに広がる懸念があります。
 「慰謝料は本来、避難に伴う精神的苦痛に対する賠償であり、帰還時期と無関係に支払われるなら理屈が通らない。分断が生じないようにとの配慮かもしれないが、理屈が成り立たないだけにかえって不公平感が生まれてしまう恐れがある」
 「慰謝料の支払いが始まった当初は、被災者の生活補償金としての性格もあった。本来なら補償金と慰謝料は別にすべきだった。事故から4年がたっても見直されず、矛盾が生じている。政策的な不作為の結果だ」

 −賠償格差による不満を縮小する手だてはありますか。
 「南相馬市では、市が自主避難を呼び掛けた原発30キロ圏外の住民に義援金などが支払われず、住民の不満が高まった。市は独自の見舞金を支給し、住民間のあつれき解消を図った事例もある。独自の支援策は選択肢になりうるが、金銭的賠償だけで地域の復興は進むとは思えない」

 −遅くても2017年3月までに帰還困難区域以外の避難指示を解除する目標が設定されました。
 「政府は放射線量が下がれば避難指示をすぐに解除できると考えている節がある。被災者が帰還できる環境が整わなければ避難指示を解除すべきではない。地域社会の再建をきちんと進めなければ、賠償を打ち切るための目標設定と受け止められても仕方がない」

<使い勝手が悪い>
 −事業者の自立支援を集中的に実施する施策も盛り込まれました。
 「復興庁によると、事業主の7割以上が60代以上で、全体の8割が事業再開できていない。避難先に住み続けるか、古里に戻るか見定められない人が多くいる。個人事業主にとって従来の支援メニューは使い勝手が良くなかった。営業損害賠償はあくまでもマイナスをゼロにするだけで、自立や再開は被災者任せにされてきた。ゼロからプラスに発展できる支援策が必要だ」
 「除染やインフラ復旧が進んでも、各種サービスを提供する事業者が帰還しなければ住民も戻らない。商工業者は、町内会や防犯活動など地域社会で果たしていた役割も大きかった。経済的な損失を補償するだけにとどまらず、事業者の公共的な役割に注目し、支援することが地域再建につながる」
(聞き手は福島総局・横山浩之)

[新たな福島復興指針]居住制限、避難指示解除準備の両区域の避難指示を2017年3月までに解除し、住民に精神的賠償(慰謝料)を18年3月分まで一律に月10万円支払う。商工業者については15〜16年度の2年間を集中的に自立支援施策を展開する期間と位置づけた。


2015年06月13日土曜日

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