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<その先へ>未来担う子育てたい/今春から郷里で教員

下校する児童と笑顔で言葉を交わす武山さん=石巻市の二俣小

◎復興大学第1期修了生 武山愛さん(石巻市)

 宮城県内の大学などが共同で開設した「復興大学」の第1期修了生、武山愛さん(23)は今春、郷里の石巻市で小学校教員としてのスタートを切った。「教育を通じて古里の復興に貢献したい」。決意を胸に教壇に立つ一方で、座学にはなかった被災地の教育現場の現実に向き合う。
 復興大学は東日本大震災の被災地の復興を担うリーダー育成を目的に、東北大や東北工大など21大学が連携して実施している教育課程。開講した2012年度、宮城教育大教育学部3年だった武山さんは、第1期生として履修した。
 講義は思想、政治、科学技術など6科目。1時間半の講義が年90あった。開講は土曜と夏休み期間中が中心。所属学部の単位に振り替えられないなど専攻する授業との両立が難しく、修了できたのは42人中15人という難関だった。
 災害や凶作という極限状態を先人がどう乗り越えたか。震災の教訓から建物の耐久性をどう発達させたか。講義を通して「日本の歴史は災害とともにある」と感じた。地盤沈下した現場の見学など、被災した塩釜市での実習は古里の光景と重なり、つらかった。
 修了しても履歴書に書ける資格にはならない。「学んだことを石巻に持ち帰りたい」。その一心で難解な課題にも挑み続けた。

 武山さんは津波で大きな被害を受けた石巻市渡波地区出身。大好きな地元で教員になるのが夢で石巻高から宮教大へ進学した。震災当日は仙台市内にいた。交通網がまひし、地元へ入れたのは3日後。しばらくの間、津波で亡くなった親族らの身元確認に追われた。
 復興大学を1年で修了し、教員採用も決まった。教壇に立った当初は、学んだことを地域の復興にどう生かせばいいか、具体策を見つけられずにいた。
 着任した石巻市二俣小は全校児童105人の小規模校。受け持つ2学年は13人と少ない。児童の1割は震災後の転入生で、津波で自宅が流され、仮設住宅から通う。

 転機は着任からひと月後。地域の農家や保護者らが、校外学習の準備などで頻繁に学校に訪れる姿を見た。「学校は地域のよりどころなんだ」。そう再認識した。
 被災直後、学校は地域の避難所となった。奔走する先輩教員の姿を思い出した。子どもたちを教えるだけではない。「子どもの命を守り育てることは、地域の未来を担うため。教員の使命感って、そういうことなのかな」
 地域と向き合う現場での問いは続く。(武田俊郎)


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2015年06月14日日曜日

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