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<お盆前帰還>楢葉町民と国の議論擦れ違い

国と楢葉町民との懇談会。議論は擦れ違いが目立った=20日、いわき市

 東京電力福島第1原発事故で全町避難している福島県楢葉町の町民に、国がお盆前に避難指示を解除する方針を説明した懇談会が28日、終了した。町内には「早く帰りたい」と解除を歓迎する声もあるが、19日から8回の懇談会では「時期尚早」などと反対する意見が多数を占めた。「解除」に対する国と町民との根本的な考え方の違いから、議論は擦れ違いが目立った。

 「解除は『安全宣言』でしかない」。国の原子力災害現地対策本部の後藤収副本部長らは懇談会でこう説明し「帰る自由を回復するだけ。帰還を強制するわけではない」と繰り返した。
 根底には「避難指示は生命・身体の危険を回避するため」との考えがある。
 12日に改訂された福島の復興指針では、避難指示は「生命・身体に危険が及ぶ状況が解消されれば(中略)速やかに解除」との方針を提示。解除の要件に(1)年間積算線量が20ミリシーベルト以下(2)生活インフラや医療などのサービスがおおむね復旧(3)自治体や住民との十分な協議−を挙げている。
 懇談会でも、国側は「楢葉は生命・身体の危険が生じないレベル。原発事故前と同じ姿ではないが、安全は確保されている」と指摘。企業の進出が難しいなど避難指示の弊害を挙げ、「解除は復興の新たなスタート」と強調した。
 これに対し町民からは「生活環境を整えて解除するのが筋だ」と反発が相次いだ。避難指示で古里、生活の場を奪われた町民にとって、「解除」は生命の危険がないことはもちろん、再び生活できる状態に戻してこそ、との思いがある。
 20ミリシーベルト以下という基準、放射性物質への不安から「安全」に疑問を抱く町民も多い。医療機関や商業施設が復旧しておらず、防犯上の問題なども帰還意欲を鈍らせる。
 町民が懇談会で「医療機関が町内にない。おおむね復旧と言えるのか」とだたすと、国側は「近隣の医療機関と協力するなど、総合的に生命・身体の危険が出ないようにしている」と回答。「除染廃棄物の仮置き場が不安だ」との声にも「生命に危険が及ぶという状況ではない」と答えた。
 新たな福島の復興指針で、精神的損害賠償が一律2018年3月まで支払われるようになったことも「まず、帰りたい人が帰れるようにする」という国の姿勢を強くしている。
 いわき市の会場で20日、男性が訴えたことが、国の考えと町民感覚の違いを象徴した。
 「国の説明を聞くと、住める環境が一部整ったというだけ。なぜ、解除を急ぐのか。帰っても生活できる環境を整えてほしい」


2015年06月30日火曜日

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