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<被災JR線>鉄路なければ観光衰退と危機感

地元の要望で、新たに設けられた大船渡線BRTの高田病院駅=陸前高田市

 東日本大震災で被災したJR大船渡線と気仙沼線の鉄路復旧の見通しが立たない中、沿線では仮復旧で導入されたバス高速輸送システム(BRT)が住民の足として定着しつつある。一方、復興事業が本格化している被災地では、定まらない復旧方針がまちづくりに影響を与えている。

 大船渡線のBRTは、気仙沼−盛(大船渡市)駅間を1日当たり上下29〜53本が走る。震災前の列車19本から増え、地元からの要望で新駅として長部、奇跡の一本松、高田高校前、高田病院(陸前高田市)碁石海岸口(大船渡市)の五つができた。大船渡魚市場前駅(同)の新設も検討中だ。
 「小回りが利き、新駅を設置しやすいBRTの良さが生かされている」と大船渡市幹部は評価する。
 1日当たりの輸送密度は2014年度265人と前年度より65人増えた。陸前高田市竹駒町から岩手県立高田病院に通う女性(74)は「家族は日中おらず、自分は車に乗れない。BRTは通院に欠かせない」と言う。
 同市気仙町の女性(60)は地区に一つだけの駅が遠く、通院には市が運営する乗り合いタクシーを利用する。BRTは路線バスより停車先が少ないのがデメリット。「低料金のBRTを使いたい人は多い」と駅の増設を求める。
 宮城県南三陸町は、気仙沼線のBRTを前提に復興まちづくりを進めようとしている。
 町が昨春実施した町民アンケートでは、鉄路復旧を望む声が48.5%とBRT継続(18.2%)を上回った。ただ、地盤を約10メートルかさ上げした中心部に商店街がオープンする「早期まちびらき」が来冬に迫り、鉄路再開を待てないのが実情。町は陸前戸倉駅(南三陸町)までの鉄路復旧を求めており、その先はBRTの活用を想定する。
 正式な方針が決まらなければ、具体的なインフラ整備を進めるのは困難だ。気仙沼市では、気仙沼線沿線で震災前は年20万人の海水浴客でにぎわった大谷海岸のまちづくりに支障が出ている。
 BRTが固定化しつつある流れに、三陸沿岸でホテルや水産加工場を営む阿部長商店(気仙沼市)の阿部泰児会長は「地域は衰退の一途をたどる」と危機感を隠さない。震災後の人口減が著しい地域には交流人口の拡大が必須。「路線図でつながっていなければ、観光客は訪れる気持ちがなくなる」と警鐘を鳴らす。


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2015年07月09日木曜日

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