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<防潮堤>地盤沈下後隆起 計画に反映されず

気仙沼市沿岸で建設が急ピッチで進む防潮堤

 東日本大震災で広範囲に地盤沈下が生じた東北の太平洋沿岸部で、震災から4年が過ぎて地盤が一転して隆起しているのに、防潮堤の高さ設定に反映されていない。国が震災直後に観測した基準点がその後は見直されていないことが一因。建設が進む地元の住民は「防潮堤が必要以上の高さになる」と疑問視している。

 国土地理院の衛星利用測位システム(GPS)による観測で、震災時からことし3月までの主な地点の地盤高の変動量は表の通り。宮城県内の上昇幅は石巻市寄磯浜の38センチ(震災時沈下幅107センチ)、東松島市矢本32センチ(同50センチ)など県内15地点全てで上昇した。
 地盤が65センチ沈下した気仙沼市でも、これまでに21センチ上昇した。地元住民は県が整備する防潮堤に「地盤隆起を堤防高に反映させてほしい」と要望する。これに対して県は「防潮堤の盛りすぎを避けたいのは当然だが、国の基準が変わっていないので堤防高を下げることは難しい」との見解だ。
 国の基準とは、国土地理院が管理している標高の基準「水準点」のこと。震災で東北の太平洋沿岸は東方向への地盤の移動と沈下が起きた。そこで同院は現地測量をし直し、2011年10月〜12年12月に震災の影響を受けた約2800地点で新しい水準点を示した。
 しかし、その後は見直していない。同院計画課は「見直しの必要性は認識しているが、地震が引き起こした地殻変動の余波が長期間続いており、タイミングが難しい」と釈明する。
 防潮堤の高さは、数十年〜百数十年に1度の発生が予想される津波を防げるように設定され、国や県、沿岸自治体が建設している。
 宮城県河川課は「GPS観測結果はあくまで速報値。防潮堤は重要構造物なのできちんと水準点に基づき建設する」と説明。国土地理院に水準点見直しの要望もしていないのが実情だ。
 ただ、防潮堤以外では地盤隆起に対応する例もある。宮城県は隆起が大きい20カ所の管理漁港で、当初計画より岸壁の高さを引き下げるなど対策を進める。
 「隆起で岸壁が海面から高くなり、船の乗り降りが大変になった。使い勝手を良くしたい」と県漁港復興推進室。柔軟な対応が防潮堤との違いを際立たせる結果となっている。


2015年08月10日月曜日

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