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津波で消失 藩制期の面影残る街並み後世に

津波で失われた街並みの記憶の継承を願い、40年の調査研究をまとめた資料集

 東日本大震災の津波で失われた陸前高田市今泉地区の街並みの詳細を正確に伝えようと、東北工大の高橋恒夫教授(建築史)が、40年にわたる現地調査の記録をまとめた資料集を出版した。「地域が育んだ歴史と文化の埋没を防ぎ、新しいまちづくりに生かす一助になれば」と高橋教授は願う。

 今泉は江戸時代、仙台藩領だった気仙郡の中心地として栄えた。郡政を執る大肝入の屋敷として藩内で唯一残っていた吉田家住宅など、伝統的な木造建築を得意とする気仙大工が手掛けた家屋が多かった。古い屋敷割りや直角に4カ所で屈折する気仙浜街道が、藩制期の面影を伝える魅力的な街並みを形成していた。
 震災では高さ15メートル以上の津波に襲われ、街並みはほとんど更地になった。今後は8メートルほどかさ上げされる計画で地形は一変する。記憶をたどるのが一層難しくなる。
 高橋教授は今泉の歴史的価値に着目。1975年ごろから調査を進めてきた。吉田家住宅を手始めに、街道沿いの住宅を1軒ずつ実測調査した。旧家所蔵の史料を発掘し、藩制期の今泉の様子や気仙大工の成り立ちを明らかにした。
 調査記録は陸前高田市も共有していたが、津波で失った。貴重な史料も家々と一緒にほとんどがなくなった。今泉の価値を後世に継承できなくなる危機感と地域への恩返しの気持ちから、資料集の発行を思い立った。
 資料集「よみがえる陸前高田市の今泉集落」はA4判395ページ。今泉に関する報告書や論文とともに95年当時の街道沿いの連続カラー写真など写真と図表を多く掲載する。
 気仙大工の家から発見された19世紀初期の家々の詳細な絵図と、高橋教授が実測した住宅248軒の間取り図もあり、往時をしのぶよすがとなっている。
 家を失った住民の一人、観光ガイドの紺野文彰さん(64)は「膨大な記録の集大成で地域の宝物だ。高橋先生の学術調査がなければ今泉の街並みは永遠に失われていた。資料集があるとないでは天地の差。子孫に引き継ぎたい」と話した。
 資料集は送料込み1冊2360円。収益金は全て吉田家住宅復元に充てる。連絡先は東北工大建築史研究室022(305)3611。


2015年08月15日土曜日

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