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<原発事故>汚染の栃木県北 賠償に不満今も

6月に栃木県北の住民有志が実施した甲状腺の無料検診。子どもの被ばくに不安を抱く親が詰め掛けた

 福島第1原発事故が放出した放射性物質は東日本を広く覆った。福島県中通りに接する栃木県北では「同じ程度の汚染があった」と福島県並みの健康調査や賠償を求める声が今も根強い。6月には那須町と那須塩原、大田原両市の住民7128人が東京電力に対し、裁判外紛争解決手続き(ADR)を申し立てた。県境や距離では割り切れない原子力災害の現実を、那須町民の胸中に探った。(中島剛)

<有志が無料検診>
 市民団体代表で同町在住の田代真人さん(72)は、栃木県北の子どもが甲状腺検診の対象でない現状を憂い、町内の有志らと3月、無料検診の自主実施に踏み切った。「福島の子は生涯無料で検査を受けられるのに、栃木の子は無視されている」と憤る。
 第1原発からの距離は約90キロで仙台市とほぼ同じ。しかし毎時の空間放射線量は栃木県北3市町の中でも高く、白河市や郡山市の値に相当する。町測定で現在、高い地点が0.4マイクロシーベルト台と仙台市の10倍程度ある。
 宇都宮大の調査では、3市町の保護者の8割強が被ばくの子どもへの影響に不安を抱く。6月に行った2回目の検診では100人の定員が数日で埋まった。
 課題は検診費用の確保。1回当たり約10万円かかる。「いつまでできるか。国の責任で学校の集団検診に組み込んでほしい」と田代さんは願う。
 ADRには那須町から1621人、人口の6.1%が参加する。参加率は3市町で最も高い。東電へは(1)福島市や郡山市など福島県内の自主的避難等対象区域内と同等の慰謝料(2)謝罪(3)健康調査、除染のための基金設立−の3点を求める。
 町民代表を務めた竹原亜生さん(71)は「事故当時は情報や知識がなく子どもを雨にぬれさせたと悔やむ親も多い。放射能汚染に県境は関係ないのに、除染も簡素。同じ国民で対応が違うのはおかしい」と訴える。

<風評被害に懸念>
  時間の経過とともに原発事故の風化は進む。風評被害を懸念する雰囲気も濃い。「放射能が話題に出なくなってきたのは確か。観光の町なので声を上げづらい側面がある」と話す。
 高久勝町長(59)は事故後いち早く、内部被ばくを調べるホールボディーカウンター(WBC)の導入や校庭・園庭の表土除去など町独自の対策に動いた。「風評被害を助長するという町民の批判もかなりあった」と振り返る。
 福島側と同等の「国の手厚い復興支援」が受けられない不満は依然として強いとしながらも、「ほとんどの町民に不安はもうない。観光客も大勢来ている」との見方を示す高久町長。ADRについては個人の訴訟として静観する。


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2015年08月18日火曜日

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