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<BRT>沿線5首長 本格復旧どうみる

鉄路に代わって運行されているBRT=気仙沼市

 東日本大震災で被災したJR気仙沼線と大船渡線をめぐり、JR東日本は先月、宮城、岩手両県の沿線5市町(宮城県気仙沼市、登米市、南三陸町、岩手県大船渡市、陸前高田市)に対し、代替運行しているバス高速輸送システム(BRT)の継続による本格復旧を提案した。各首長に提案への賛否やJRに求める対策などを聞いた。

◆観光振興機能の回復を 菅原茂気仙沼市長
 JRが民間企業である以上、提案は重く受け止めている。しかし、BRT継続だけでは了承できない。鉄路が持っていた機能がよりよい形で回復するような提案を求め、近くJRと事務レベル協議に入る。
 要望の一つは、大量輸送できる鉄路が担っていた地域振興や観光振興機能の回復だ。JRには新たな施設などハード、ソフト両面の取り組みを求めている。もう一つは仙台へのアクセス。BRTは鉄路に比べ速達性に劣る。三陸沿岸道路での高速バス運行を確約してほしい。大船渡線と東北新幹線を乗り継ぐ場合の料金軽減などの配慮もお願いしている。
 鉄路復旧を望む市民は少なくない。ただ、利用客が減少し、サービス向上が望めなかった震災前の気仙沼線にどれほど希望があっただろうか。より大きな希望をつかみ取るため、JRと真剣に協議していく。
 被災した鉄路沿線では、復興まちづくりが着々と進んでおり、市民の意見をJRとの協議に反映させながら年内には決着させたい。

◆きめ細かいルート可能 布施孝尚登米市長
 気仙沼線沿線の住民の不安は、公共交通機関がなくなってしまうことだ。線路が走っていれば、そう簡単には交通機関はなくならないだろうが、バスは鉄路より撤退しやすいのではないかという懸念がある。
 とはいえ、鉄路での復旧は現実的ではない。経費が掛かるという面に加え、既にまちづくりが進んでしまった土地に後からレールを敷くのは難しいだろう。
 その点で、BRTは評価している。ルート設定などで鉄道よりも細かいニーズに応えやすい面もあり、路線バスに比べて定時性を確保できるからだ。
 登米市の場合、気仙沼線前谷地(石巻市)−柳津(登米市)間は鉄路が残る。その途中の陸前豊里駅周辺は、石巻など沿岸部出身者が多い。仙台や石巻へのアクセスが良いという理由で住んでいるようだ。JRにはその辺の事情をしっかり考慮してもらいたい。
 地域の足としてBRTにするのであれば、将来的な運行本数の減少あるいは廃止とならないよう強く求めていきたい。

◆復興推進鉄路待てない 佐藤仁南三陸町長
 JR側の提案を受け入れる。かさ上げ工事が進み現行ルートでの復旧は不可能で、気仙沼線を移設する場合は400億円足りない。国の財政支援はかなわず、町は到底負担できない。
 鉄路復旧にかかる時間も問題だ。新ルートの調査設計、用地買収を経ると、十数年必要になる。復興まちづくりをこれ以上遅らせるわけにはいかない。
 観光客の多くは自家用車や高速バスを使う。本年度は三陸沿岸道路が町内に延び、仙台市まで1時間で結ばれる。レールが残る柳津(登米市)−陸前戸倉(宮城県南三陸町)間の鉄路復旧を求めてきたが、鉄路にこだわれば乗り換えが増え、利用者には不便だ。
 BRTは地域の要望に沿って新駅や便数を決められる。今月5日には地域の産業団体との意見交換会を開いた。継続的に話し合い陸前戸倉駅の在り方をできるだけ早く結論付けたい。
 観光客は昨年、13%減った。2カ所の復興商店街が苦戦している。JRの協力を得て、観光資源の掘り起こしに力を注ぎたい。

◆高齢者の足確保が大切 戸田公明大船渡市長
 JRは勇気を持って今回の提案をしてきたと思う。責任ある公共交通の事業者としてベストな提案と評価している。
 市内の経済団体などとの懇談会を11月までに計4回開き、JRに対する市の要望をまとめたい。その上で(JRと沿線自治体が協議する次回の)首長会議に臨みたい。
 地域の公共交通の在り方として、まず配慮しなければいけないのは高齢者だ。JR、路線バス、長距離バスなどさまざまな交通体系があるが、車を運転できない高齢者の足をどう確保するか。これから高齢化社会が進んでいくのは確実で、そこを無視した議論はできない。
 地元の実情としては、今のBRTの終着は盛駅(大船渡市)だが、利用者の多い大船渡東高前まで路線を延ばすことは必要だと考えている。
 BRT専用道の割合も高めてほしい。現在の各駅停車の形ではなく、特急や急行の運行もあっていい。時間を短縮できるので、利便性が非常に高まる。

◆通学用に路線延ばして 戸羽太陸前高田市長
 JRが「BRTしかない」と断言した以上、こちらに選択肢はない。持続可能な公共交通を、どのような形で実現するかに議論は移った。
 地方の公共交通事情は厳しい。BRTが地域交通の基幹部分を担い、BRTの駅を起点に、離れた地域をコミュニティーバスなどでつなぐべきだ。公共交通の在り方を示す新たなケースになると思う。住民から意見を聞き始めており、9月末までに市内の全地区を回る予定だ。
 JRに求めたいのは、地元の高校生が使いやすい路線だ。大船渡市内の高校に通う生徒は盛駅(大船渡市)までのBRTしかなく、そこから別のバスに乗り換えるなど非常に不便だ。鉄路なら無理でも、BRTであれば拡充ができる。もう一つは、一関市までのアクセスをどう確保するかだ。
 BRTによる復旧で、陸前高田が鉄道のない街になってしまうことが気掛かりの一つだ。「この地域にJRは根を張っているぞ」と、その存在が分かるようなものがほしい。


2015年08月27日木曜日

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