福島のニュース

<準備宿泊>医療・商業の早期復旧が鍵

福島県川俣町山木屋地区にある診療所。町は来年4月の再開を目指すが、医師は確保できていない

 東京電力福島第1原発事故に伴う住民避難が続く福島県の南相馬市、川俣町、葛尾村で31日に始まる準備宿泊。地域再生の一歩とはいえ、自宅に戻る人は全体の1割に満たない。医療や買い物といった生活基盤の早期整備が、今後の住民の動向を左右しそうだ。

<入院はできず>
 「いずれ車の運転も難しくなる。何より地元に病院がほしい」。南相馬市小高区で準備宿泊に臨む都谷啓さん(79)が訴える。
 区内に七つあった医療機関のうち、再開しているのは市立小高病院だけ。それも週4日の外来診療に限られ、入院はできない。帰還住民は高齢者が中心になるとみられ、医療体制の行方に関心が高い。
 川俣町で準備宿泊が行われる山木屋地区内には町立の診療所がある。町は来年4月の再開を目指しているが、肝心の医師は確保できていない。町の担当者は「県と連携して探しているが、なかなか見つからない」と焦りの色を見せる。
 葛尾村も村の診療所を来春復旧させるが、生活圏となっていた浪江町などの復興が遅れているのが気掛かりだ。三春町に避難する女性(68)は「浜通りの医療機関に頼れないのは不便」と漏らす。
 住民定着には、日用品をそろえられる商業施設の存在も欠かせない。多くの経営者は仮設での営業、休業を強いられており、帰還状況によっては廃業が相次ぐ可能性がある。
 南相馬市小高区では、再開にこぎつけた商工会加盟事業者は30程度。全体の1割ほどにとどまる上、小売業界の動きは鈍い。川俣町山木屋地区中心部の3商店のうち、営業を予定するのは1店しかない。

<拠点整備計画>
 福島市に近い川俣町を除き、南相馬市、葛尾村は一体的な商圏を構成していた。小高区から南相馬市原町区に避難している女性(66)は「自治体や地域単位ではなく、圏域全体が再生しなければ元の暮らしには戻れない」と指摘する。
 帰還住民の暮らしを支えようと、各自治体は知恵を絞る。南相馬市は現在、小高区中心部に仮設店舗をオープンさせる準備を進める。川俣町は山木屋地区に商業、福祉などの機能を集約した復興拠点の整備を計画中。避難指示解除から1年後の開業を目指す。
 地域経済の再生は、定住人口に直結する重要テーマになる。川俣町企画財政課は「今後、復興拠点での再開を呼び掛けていきたい」と話した。


2015年08月30日日曜日

先頭に戻る