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<楢葉4年半の重み>地域の輪 再生遠く

クリーンアップ作戦で地域を歩き、ごみを拾う北田地区の人たち=8月9日

◎全町避難解除へ(中)コミュニティー

<5年ぶり復活>
 東京電力福島第1原発事故による避難指示の解除まで1カ月を切った8月9日、福島県楢葉町では町内の「クリーンアップ作戦」が行われた。お盆前の恒例行事が5年ぶりに復活した。
 「以前は、開始の朝6時前に終わっていたな。みんな5時には動き始めて」。町中心部に近い北田地区。参加者は笑顔で言葉を交わし、空き缶などを拾った。
 174世帯の北田では原発事故前、地区運動会が大いに盛り上がり、花いっぱい運動も盛んだった。一声掛ければ住民が集まった。
 清掃活動にも200人が姿を見せたが、この日は25人だった。それでも行政区長の山内茂樹さん(64)は「現状を考えればよく集まった」と感じた。
 準備宿泊で地元に泊まり続けるのは10世帯ほどにとどまる。「泊まりに来て寂しくて帰る人もいた。解除後も戻る人は急には増えないだろう」と山内さん。「行政区も昔のような役割は果たせない。帰町者の把握など、できることを一つ一つやるしかない」と話す。
 全町避難の4年半は、あらゆるコミュニティーを崩した。住民総出の祭り、老人会、サークルといった活動は中断したまま。山田岡行政区長の遠藤一教さん(67)は「人と人とのつながりという、小さな町の根っこ部分が切れてしまった」と嘆く。

<新たな絆優先>
 福島県いわき市にある小名浜林城仮設住宅。自治会長猪狩政文さん(64)は楢葉町のクリーンアップ作戦には参加しなかった。
 代わりに仮設周辺の清掃に汗を流した。「地域の人にお世話になっているから」と、毎月第2日曜の自治会活動を優先させた。
 林城仮設は自治会の動きが活発だ。集会所は常に女性たちの声が響く。8月6日には15人ほどが七夕飾りを2本の竹に取り付けた。
 楢葉町で1人暮らしだった関根昌子さん(87)は「楢葉ではいつも近所が集まってお茶飲みをしていた。でも今帰ったら、人がいなくてぼけてしまう。ここはありがたい」と手を動かした。
 避難先で新たな根が生えている。猪狩さんは「集会所での絆は今や中途半端な親類より強い。それが帰町の妨げにならないか、ジレンマもある」と打ち明ける。
 復興庁などが昨秋実施した調査では、町に「すぐ戻る」と答えたのは9.6%。その回答者の34.6%がコミュニティー活動への支援を行政に求めている。
 林城仮設の竹飾りには「楢葉に戻りたい」「帰町後も皆様との仲をいつまでも」「穏やかな日々が続くように」などと書かれた短冊が結びつけられた。
 猪狩さんは言う。
 「みんな楢葉に帰りたいが、独りぼっちにならないかと不安なんだ。やはり4年半は長過ぎた」

[メモ]4月6日に始まった準備宿泊の登録は351世帯780人(8月31日現在)。町の調査では実際の宿泊は90〜120世帯にとどまる。行政区は20。町は8月29日に設置した第2期町復興推進委員会で、帰町後のコミュニティー対策を検討する。


2015年09月02日水曜日

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