福島のニュース
  • 記事を印刷

<その先へ>サケの古里復活間近/にぎわい創出目指す

再建工事が進むふ化場と鈴木さん=福島県楢葉町の木戸川漁協

◎福島県楢葉町・木戸川漁協ふ化場長 鈴木謙太郎さん(いわき市)

 東日本大震災の津波で被災し、再建が進む福島県楢葉町の木戸川漁協(松本秀夫組合長)で、サケの試験捕獲が始まる10月、加工場と売店が再開する。採卵、ふ化も11月には復活する。4年半の間、現場に通い続けてきた若いふ化場長は、東京電力福島第1原発事故以来の避難指示が今月5日に解除された同町に「にぎわいを生みたい」と願う。
 ふ化場長は鈴木謙太郎さん(33)。津波で全施設が損壊し、700万匹の稚魚が全滅した漁協の復旧を担う。無人となった町に、福島県いわき市の自宅から通う苦労は、2013年5月の本紙連載「ふんばる」で紹介された。
 廃虚の様相となった構内の除染を経て、ようやく再建工事が始まったのはことし7月。そこに至るまで、2度の入札不調があった。
 「例えば加工場は、03年の開業時に約3億円で建ったが、いまは設備だけで同額。人件費と資材の高騰のため、費用は倍になった」
 予算総額も約20億円にほぼ倍増し、漁協の手に余る域に膨らんだ。そこで町と相談して町営事業に位置付け、国の復興交付金を活用する策で乗り越えた。

 震災前はサケの稚魚1200万〜1500万匹を放流し、国内有数の施設だった。試験捕獲は12年以来毎年秋、放射能測定を目的に計10回で1000匹ほど捕っていた。「不検出」の結果を重ねているが販売、採卵、ふ化はまだ行っていなかった。
 ことしの試験捕獲は10月5日に始まる。同町の避難指示が解除されたことで、「県の検査で安全が確かめられれば、販売もできる」。
 加工場と売店は間もなく完成し、10月下旬には新鮮な切り身やイクラ、みそ漬け、新巻きザケなど「木戸川名物」を復活させる。加工場に放射性物質の検査機器を備え、客に使ってもらい、買いたい品を自由に測れるようにする。「一番の心配が風評。安全を自ら確かめてもらう」

 ふ化場長として心待ちにするのが採卵、ふ化の再開だ。再建中の施設は、一つ一つの池が広くなり、環境浄化の自動装置も付く。入札不調のあおりで工事が遅れ、11月に予定する採卵開始までに4分の1の面積しか使えず、ふ化の目標も300万粒にとどめた。
 「でも、来春には自前の稚魚を放流できる。再来年の春には1000万匹を」
 避難指示解除後の町内には帰還する住民が少なく、ふ化場のスタッフ確保にも苦労する状況だ。「そこに、にぎわいを生み出せたら。全線開通した常磐道の南北から客を呼び戻したい」
 連絡先は木戸川漁協0246(84)5552。
(編集委員・寺島英弥)


関連ページ: 福島 社会

2015年09月25日金曜日

  • 記事を印刷

先頭に戻る