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<その先へ>動き始めた水田放牧/営農再開の先駆けに

除染後の水田に立つ山田さん=福島県飯舘村関根松塚

◎畜産農家 山田猛史さん(福島県飯舘村)

 福島第1原発事故で全村避難が続く福島県飯舘村の関根松塚地区で、除染後の水田を放牧地として活用する構想が動きだした。農業山田猛史さん(66)が自らの水田で来年、牧草栽培試験を行おうと準備中だ。2017年3月までの避難指示解除方針が決まり、「地区の営農再開の先駆けとなり、仲間の帰還、行政区の再生に役立ちたい」と言う。

 43世帯の関根松塚行政区(高橋文男区長)は、村内でいち早く仮々置き場設置を受け入れ、家屋と農地の除染が終わった。協力するNPO法人ふくしま再生の会、東京大福島復興農業工学会議の調査の結果、除染後の水田は、空間放射線量、土壌の放射能濃度とも低減したが、風評を懸念する住民の間に稲作再開の希望はない。
 構想では、整然と区画整理された水田が耕作放棄地とならぬよう、牧草を育て、北海道並みに広い放牧地づくりを目指す。3月に「その先へ」で紹介された。
 「避難指示の解除から1年後には、営農再開が宣言されるだろう。それを目標に自分の水田を種地とし、希望する住民から水田を借りて広げ、まず50頭から放牧を始めたい」。地域の住民が主体となった復興の先駆けに、と意気込む。
 牧草栽培試験は、村が営農再開を支援する事業として本年度に始めた。山田さん側の準備が整うのを待って、来年春か秋の種まきを想定している。牧草の生育や適した種類、放射性物質の有無などを調べる。
 山田さんは30アールの水田3枚を連ねて試験地としたい考え。環境省は地力回復工事も行うが、放射性物質の吸収抑制に効く土壌改良材や肥料の投入が主で、それだけでは農地再生にならない。

 市場で高く評価されてきた飯舘の牛。「それは農家が堆肥に富んだ土をつくり、牧草を育てたから。だが、全村避難の村に牛はもう1頭もいない」
 山田さんは原発事故後もなりわいを諦めず、避難先の同県中島村で牧舎を借りて牛の繁殖を再開した。1年前、村に近い福島市飯野町に移って家と牧舎を建て、26頭を飼う。試験のために「牧舎から堆肥を運び、まず土を再生させたい」と言う。
 行政区も水田放牧構想を帰村後の土地利用の柱と位置付け、畜産やハウス園芸など、住民たちの農業再開のけん引役を期待する。
 山田さんの三男豊さん(33)は京都市で食肉業の修業をし、プロを目指す。来春、家族で共に、と福島市に戻ってくるという。「親子で将来、関根松塚を和牛の里にもり立てるのが夢。あと10年頑張らねば」(編集委員・寺島英弥)


関連ページ: 福島 社会 その先へ

2015年10月11日日曜日

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