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<検証避難>判断負う親 自責に悩む

山根純佳氏(やまね・すみか)東大大学院修了。山形大人文学部講師、同准教授などを経て15年4月から現職。専門は社会学、ジェンダー論。39歳。横浜市出身。

◎実践女子大准教授 山根純佳氏に聞く

 東京電力福島第1原発事故で避難指示区域外の人々が自主避難を選択したのはなぜか。山形県で福島県の母子避難者の生活実態を調査した実践女子大人間社会学部の山根純佳准教授(社会学、ジェンダー論)に聞いた。(聞き手は報道部・伊東由紀子)

 −自主避難の背景は。
 「出発点として原発事故後、福島が安全と言えなかったことを共通認識にしなければならない。放射線の影響はグレーゾーン。科学的に証明されないことが、リスクがないということではない。被ばくリスクを指摘する情報があふれ、自主避難者は福島が安全かどうか分からないと判断した。根本に国、県などが出す情報への不信感もある」

 −多くが母親と子だ。
 「女性は妊娠して母子手帳が付与されたときから、子の福祉を満たす役割を課され、あらゆるリスクを避けることが求められる。事故で被ばくから子どもを守ることも母親のケア責任の一つになり『どこに住むか』も判断の対象となった」
 「無償の借り上げ住宅という選択肢があり、被ばく生活と避難生活の不都合がてんびんに掛けられた。母子のみの避難は男性が稼ぎ手、女性がケアという性別役割分業に基づいて選択された」

 −母子避難の現状は。
 「避難した場合は父親との分断や環境の変化を子どもに強要したという自責感を、避難しなかった場合は子どもをリスクにさらしているという自責感を抱く。避難をしてもしなくても、親は選択が正しかったのか悩み、その責任を負わされる。避難の判断が個人に迫られた問題は他に例がない」
 「福島の子どもたちは避難の有無にかかわらず被災者。福島に何が起きたのかや、福島が置かれている構造的な問題を教育で伝えていかなければいけない」

 −空間線量が下がり、国は自主避難への支援を縮小する方針だ。
 「自主避難を続けているのは避難先で生活の基盤ができた人たち。子どもの卒業や入学といった節目の帰還を望んでいる。一律の支援打ち切りではなく、子の成長段階に配慮した個別の対応が求められる。支援の縮小は、ホットスポットの解消などできる限りの対策を取ってから行うべきだ」


2015年10月20日火曜日

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