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原発風評にあらがい 有機米再生の道探る

有機栽培したコメの作柄を確認する藤原さん

 稲作がことし本格再開した福島県南相馬市で、有機米を手掛けてきた生産者が販路確保に挑んでいる。東京電力福島第1原発事故で作付けの自粛を強いられ、長年取引のあった顧客の多くを失った。根強い風評の壁にあらがいつつ、農業の活路を探る。

 南相馬市原町区の農業藤原光栄さん(65)は原発事故後、首都圏の学生らを対象に農業体験会を開催してきた。一緒に農作業で汗を流したり、試験栽培で収穫したコメを試食してもらったりしている。
 藤原さんは「従来の個人客との関係は途絶えた。口コミで新たなファンを開拓していきたい」と話す。
 化学肥料や農薬を使わない有機栽培が特長だった。ことしの作付けは1.5ヘクタール。飼料向けの1ヘクタールに農薬散布したものの、残る食用分では従来の栽培法を貫いた。「飼料米の単価では若者が夢を抱けない」。付加価値の高いコメ作りに、地域農業の未来を託す。
 藤原さんは福島県内の農家約15人でつくる県環境保全稲作研究会のメンバー。会でも新たな取引先を探しているが、納入までの道は険しい。農家の1人は「放射性物質の検査後に出荷する予定だが、市場が求める安全基準は非常に高い」と嘆く。
 南相馬市の原発20キロ圏外ではことし、営農自粛に対する賠償が打ち切りとなった。今春は作付面積の拡大が期待されたが、実績は目標の半分程度。このまま販路が途絶えれば、コメ農家の経営意欲は高まらない。
 研究会では、顧問の渡部泰之さん(84)方でもコメ作りを本格化させている。農作業は引退したが、有機米への情熱は今も衰えない。従来の個人客や卸業者に代わり、贈答品としての販売に期待をつなぐ。
 渡部さんは「20年にわたって手を掛けてきた土壌には自信がある。食味以外の魅力も発信したい」と前を向いた。


2015年10月20日火曜日

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