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<やまがた新電力>脱原発の選択肢 災害は?

新電力が売電契約の交渉を進めている天童市の太陽光発電所

 都道府県が主導する全国初の地域電力会社「やまがた新電力」が9月30日、山形県と民間企業18社の出資で発足した。電力小売りが全面自由化される来年4月、県内の再生可能エネルギーで発電された電気を買い取り、供給する事業を始める。原発由来でない電力購入の選択肢が生まれ、再生エネの広がりに期待が高まるが、災害時に役立つとは言い切れず、設立効果に懐疑的な見方もある。(山形総局・宮崎伸一)

<6000世帯分に相当>
 「経営が軌道に乗り取扱量が増えれば、一般家庭への売電も検討する」。吉村美栄子知事は設立総会後の記者会見で、新電力の将来性に強い期待感を示した。
 新会社は資本金7000万円。県が2340万円を出資し、地方銀行、発電事業者、需給調整専門会社など18社が残りを負担し株主になった。
 太陽光、風力、バイオマスなどで発電された電気を年間2300万キロワット時買い取る方向で、県内の発電事業者13社と契約交渉中。一般家庭6000世帯分の消費電力に相当し、当面は70カ所の県有施設に供給する。
県内供給の0.3%
 買い取り価格と売電価格は当面、東北電力と同水準に設定し競争しない。ただ、発電事業者の売電先、県有施設の電力供給元は東北電から切り替えてもらう。
 東北電は顧客を奪われる形だが、山形支店の担当者は「電力小売り自由化で、さまざまな動きが出てくる。やまがた新電力もその一つ」と冷静に受け止める。東北電の県内供給量は79億キロワット時。新電力の規模はわずか0.3%に過ぎない。
 新電力の設立は、吉村知事が目指す「卒原発」の一環で、県エネルギー戦略に基づく。10月20日の定例記者会見で、知事は東日本大震災時に県内の約8割が停電したことに触れ「最大限教訓として生かすべきだ」と力を込めた。
 新電力の目的を(1)電力の地産地消(2)地域経済の活性化(3)災害対応力の向上−と説明。原発を含む県外の電源に依存せず、県内の再生エネで県内の消費電力を賄うことで、地域経済活性化と危機管理の二つを狙う。

<自前送電網なく>
 全国では群馬県中之条町が2013年に「中之条電力」を設立し、自治体の新電力に先鞭(せんべん)をつけた。その後も鳥取、浜松両市が相次いで参入し、少しずつ広がりを見せる。
 市民団体「やまがた自然エネルギーネットワーク」代表の三浦秀一東北芸術工科大教授は「震災以降、原発に頼らない生活を願う人が増えた。電気を選べる可能性が高まった意義は大きい」と新電力を評価する。
 ただ、設立目的の「災害対応力の向上」には懐疑的な声も上がる。新電力は自前の送電網を持たず、東北電と託送契約を結ぶためだ。災害で東北電の送電網が被災すれば、新電力は電気を届けられず、代替手段になり得ない可能性がある。
 自民党県議の一人は「設立目的の達成が見通せない中で、県が多額の税金を投じ新電力に乗りだす必要があるか」と疑問を呈する。
 吉村知事は「今すぐは災害対応力(の向上)につながらないが、第一歩にはしたい。災害時、地域で電力を自給自足する仕組みを一つずつ整える」と語った。

[山形県エネルギー戦略]東日本大震災の教訓を踏まえ、2012年3月に策定した。吉村美栄子知事が掲げる「卒原発」を具現化した政策。太陽光、風力、バイオマスなどの再生可能エネルギー導入を促進し、30年までに原発1基分に相当する101万キロワットの開発を目指す。電力のエリア供給システム構築も明記し、特定規模電気事業者(新電力)設立も事業展開のモデル例として挙げている。


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2015年11月02日月曜日

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