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<被災地の議員>「古里に人を」奔走

地域を回り村民と語らう鮫川村議の遠藤さん(左)=福島県鮫川村

 東日本大震災と東京電力福島第1原発で大きな被害が出た岩手、宮城、福島各県で、政治と縁遠かった人たちが市町村議選に挑戦し、新人議員として歩みだしている。傷ついた古里の役に立ちたいと決断したUターン、支援に入った被災地への移住、復興に懸ける第二の人生。震災をきっかけに転機を迎え、地方自治の現場に飛び込むことになった3人の姿を追った。

◎決意の新顔(上)福島・鮫川村議 遠藤貴人さん/競輪選手から転身

<原発事故が契機>
 12年間の競輪選手生活にピリオドを打った。4月の統一地方選で福島県鮫川村議に無所属で初当選した遠藤貴人さん(35)は、競輪の勝負服からスーツに着替えて地域を飛び回る。
 「人生で立ち止まる契機となったのが、震災と原発事故だった」
 鮫川村で生まれ育ち、10代のころは都会生活に憧れた。競輪選手として活躍し、20代でスポーツカーなど欲しいものを次々と手にした。しかし、30代でどこか満たされない気持ちを感じるようになった。
 通算成績は115勝。実力者が競い合うS級で戦った自負もある。地元に目を向けると、同級生が家業を継ぎ地道に頑張っている。「自分のことだけを考える人生でいいのか」と自問していた時、東日本大震災が起きた。
 「面倒を見てくれた地域のため、役に立ちたい」
 足元を見つめ直し、村議を志した。阿武隈高原南部にある山あいの村は人口約3600人。少子高齢化は深刻で、同世代と共に村を支えようと決心した。

<おしかりは平気>
 政治に関心はあった。だが全くの素人だ。「側溝のふたを掛けてほしい」といった声を丁寧に拾い歩く。新人として、時に手厳しい意見も浴びせられるが、じっくりと耳を傾ける。
 「競輪選手時代、レースで負けると、お客さんから『ばか』だの『金返せ』だのと言われていた。おしかりを受けるのは平気ですよ」と冗談めかして笑う。
 収入は選手時代の5分の1に減ったが、充実感は大きい。村議になって半年。議会では一般質問に立ち、高齢化で増える遊休農地を市民農園として貸し出す「クラインガルテン」の必要性などを訴えた。
 「若い人とお年寄りが手を組むことで、定住人口増加のきっかけにしたい」
 かつて古里の田舎臭さが嫌だった若者が、地域に人を呼び込むために奔走している。(郡山支局・吉田尚史)


2015年11月04日水曜日

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