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土に根ざし半世紀「地下水」廃刊の危機

58年間にわたって発行されてきた同人誌「地下水」

 山形市出身の農民詩人真壁仁(1907〜84年)の呼び掛けで1957年に創刊された農民文学の同人誌「地下水」が、8月に発行された最新号で50号を数え大きな節目を迎えた。高齢化が進む同人の間には廃刊の議論もあり、58年間の半世紀以上にわたって脈々と受け継がれてきた「地下水」の流れは、静かに姿を消そうとしている。

◎詩人・真壁仁の精神継ぐ

 7作品を収録した最新号の巻頭を飾るのは、真壁が残した直筆原稿の中から選ばれた詩「ぼくはじきに優しさを…」。河北新報に寄稿された作品で、1971年元日の第2朝刊1面に掲載された。真壁は河北文化賞、斎藤茂吉文化賞などを受賞している。
 山形農民文学懇話会が発行し、現在は県内外の18人が作品の執筆や編集に当たっている。テーマは自由で、ジャンルも詩やエッセー、小説など多岐にわたる。農業に従事していない同人もいるが、それぞれが地域に根差して創作をしていることが共通点という。

<仕事の傍ら創作>
 創刊号から参加する上山市の農民詩人木村迪夫さん(80)は「真壁さんは文学の本質、人間としての生き方を教えてくれた。その精神を残していこうという意識が同人の間にあったからこそ、今日まで続いてきたんだと思う」と振り返る。
 戦後間もなく、農村の青年らの間では、生活や仕事について記録する生活記録運動が盛んに行われた。封建的な村の制度や米軍による占領などの下で、青年らはサークルを作り、生活記録を共有して議論を重ね、社会の変革や個々の抱える問題の解決を模索した。
 その流れの中で、より文学的な作品を追求したのが「地下水」だ。新たな同人も迎えながら、それぞれが仕事の傍らで創作を続けてきた。かつては月に1回集まり、真壁を囲んで文学や時代を論じた時期もあったという。

<書き手が高齢化>
 最近では同人は70〜80代が中心になり、顔を合わせる機会も年に1回程度になった。編集を担当する山形市の無職川田信夫さん(67)は「同人が高齢になるとともに、訴えたい、発表したいという人がだんだん少なくなってきた」と話す。
 木村さんも「地下水は私にとって精神的な拠点だった。廃刊は寂しいが、今は社会に情報があふれ、文章を書きたい人が減った。土に根差した生活も必要とされなくなってきた」と現状を受け止めている。
 「地下水」は山形県立図書館などで閲覧できる。連絡先は川田さん023(643)3412。


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2015年11月05日木曜日

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