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震災犠牲者遺族の霊体験 周囲が受け止めて

亡き人と再会した不思議な体験について、遺族の話を聞く奥野さん(右)

 東日本大震災の犠牲者と遺族が再会した「不思議な体験」の聞き取りを、ジャーナリストの奥野修司さん(67)=東京都在住=が被災地で続けている。切々とした告白からは、喪失感の大きさ、魂と再び巡り合った喜び、体験を周囲に理解してもらえない苦しみ…といった遺族の心の深奥が垣間見える。

 奥野さんはこれまで約20人の遺族を取材した。多くの場合、亡き人の霊や魂の存在を感じた体験が、寂しさ、悲しさに沈む遺族に安らぎをもたらしている。
 小学2年生の子を失った母親は、足音にまつわる体験を話してくれたという。時々起こる仮設住宅の天井を踏む音が、亡き子の歩き方にそっくりで家族全員が確認した。母親は「そんなに悲しまないで、と励ましてくれているのかな」と前向きに感じている。
 兄の死亡届を書いた妹の携帯電話に「ありがとう」と兄からメールが入った話。行方不明の夫が発見された後、就寝した妻の布団に何かが入り込み「お父さんだ」と直感した話。いずれも遺族は肯定的に受け止める。
 「墓は作りたくない。いつまでも成仏してほしくない」。子の霊の出現を重ねて願う母親もいた。そうした率直な思いが誤解を生むケースもある。「被害者意識が強い」「非科学的だ」などと周囲の冷たい目を感じた遺族は少なくない。
 霊体験を語ることを否定的に捉える面がある風潮について、奥野さんは「遺族の悲しみを現代社会が受け止め切れていない」との考えを示す。霊がいる、いないではなく、遺族の体験そのものを素直に尊重すれば「遺族が語りやすくなり、悲しみのセルフケアにつながる」と説く。
 石巻市の遠藤由理さん(42)は震災の2年後、津波の犠牲になった長男の康生(こうせい)ちゃん=当時(3)=に心の中で声を掛けた時、愛用のおもちゃが突然動いた体験を奥野さんに語った。
 「私の体験は紛れもない事実。こうちゃんは私を見ていると100パーセント確信できた。息子が生きた証しを残すために取材を受けた。もっと楽に霊体験を話せる世であってほしい。話すことで自分の心が開けた。奥野さんは全部聞いてくれた」と遠藤さんは話す。
 奥野さんは今後も聞き取りを続け、書籍化を目指す。「単なる霊的体験集ではなく、死者と遺族が一緒に生きた歴史を物語にしたい」と述べ、聞き取りに協力してくれる人を募集する。


関連ページ: 宮城 社会 祈りと震災

2015年11月07日土曜日

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