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<ツタヤ図書館>中心街への求心力期待

多賀城市立図書館などが入る再開発ビルの建設が進む=JR仙石線多賀城駅北側

◎知の拠点 多賀城に来春開館(上)まちの悲願

 東日本大震災で被災した宮城県多賀城市が復興の象徴として整備する文化交流拠点の中核施設、再開発ビルが来年3月、JR仙石線多賀城駅前に完成する。目玉は、レンタル大手TSUTAYA(ツタヤ)の運営会社を指定管理者とする市立図書館。一緒に入るカフェや書店との相乗効果による新たな人の流れに期待が集まる一方、同社が関わる先行事例には運営面の課題が噴出する。新図書館をめぐる試行錯誤が続いている。(多賀城支局・佐藤素子)

<40年の総仕上げ>
 多賀城駅北側で建設が進む再開発ビルの壁面に、「多賀城市立図書館」のロゴが登場した。
 ビルにはツタヤを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が指定管理者となる市立図書館と、同社直営の書店などが入居。双方合わせた約45万冊の「知の拠点」が誕生する。仙台のベッドタウンである多賀城市が「もう一つの家」と例える滞在型図書館を目指す。
 「ようやくここまできた」。菊地健次郎市長(68)は感慨深げに語る。
 多賀城市は求心力に欠ける「へそのないまち」とされる。中心街形成は市の長年の懸案。市は都市機能を集約したコンパクトシティーを目指し、再開発ビルを約40年に及ぶ駅前再開発の総仕上げと位置付ける。

<CCCモデルに>
 「知の拠点」は当初から構想されたわけではない。ビルには震災前、特別養護老人ホームの入居が決まっていた。震災で事業は白紙に戻り、市は芸術・文化による復興まちづくりへと方針転換。書籍や映画を通じてさまざまな世代が出会い、交流の場として注目されたCCCの「代官山蔦屋書店」(東京)をモデルに誘致に動いた経緯がある。
 「再開発の目的は単なるにぎわい創出だけでなく、市民が交流し、集う場をつくること。行政には人を呼び込むノウハウはない。民間のCCCが運営を担うことは、両方の課題を一気に解決する方法だった」。誘致交渉を担当した市幹部は狙いをこう説明する。

<年120万人見込む>
 市は図書館と書店を中心に近隣の市文化センター、東北歴史博物館などと連動した「東北随一の文化交流拠点整備」を掲げる。新図書館の年間来館者数は120万人を見込み、青写真は壮大だ。
 市が10月に策定した地方創生の総合戦略では文化交流拠点を通じた人材育成を重点プロジェクトの一つに挙げ、新図書館を拠点に、まちづくりの担い手育成にも乗り出す考えだ。
 多賀城商圏の地盤沈下は震災を機に深刻さを増す。県が2012年に実施した調査では、多賀城商圏の吸引人口は08年比で47.8%減少。多くの来館者が期待される図書館は、中心街形成の中核的役割を担う。
 「知の拠点」への期待は既に地域に広がる。交流人口の増加に向け、地元の商工会は防犯カメラ設置など環境整備に動きだした。
 多賀城・七ケ浜商工会の安住政之会長は「駅周辺には人出の受け皿となる飲食店などの施設用地が少なく、このままでは地域経済への波及効果は限定的だ。意欲のある商業者の新規出店を支援したい」と話す。

[JR仙石線多賀城駅前再開発事業]75年に着手し、土地区画整理事業と仙石線の立体交差は既に完了した。再開発ビルは3棟構成。駅北側には図書館などが入るA棟、隣接するB棟には子育て支援センター、保育所などが入居する。駅南側には立体駐車場のC棟が建設される。ほかに民間のマンション2棟、商業施設も整備される。


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2015年11月08日日曜日

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