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<福島の断面>廃炉拠点施設 期待と疑問交錯

開所式が行われた福島県楢葉町の拠点施設=10月19日

 東京電力福島第1原発の廃炉研究拠点などを福島県浜通り地方に集積する国や県などの「イノベーション・コースト構想」で、住民避難が続く市町村への拠点施設の整備が進んでいる。原発事故で大きな痛手を負った地域経済再生の原動力になる、と自治体の期待は大きい。地元企業関係者も関心を寄せるが「住民帰還につながるのか」と波及効果に懐疑的な見方もある。復興途上にある福島の重要課題に浮上しており、財源確保など県が主体的にどう関わっていくかが問われる。

<産業集積目指す>
 全町避難が解除されたばかりの楢葉町で10月19日、構想の一角を担う「楢葉遠隔技術開発センター」の研究管理棟の開所式があった。「世界の英知を結集する拠点となる」。式典には安倍晋三首相も駆け付けて祝福した。
 第1原発2号機の原子炉建屋内を3次元映像で再現する機器が設置され、遠隔操作などを訓練できる。来春には原子炉格納容器下部の実物大模型を備える実験棟も完成予定だ。
 構想には国や県、自治体関係者などが参画。エネルギー関連産業や先端技術を活用した「スマート農業」など幅広い産業の復興や企業集積を目指す。拠点施設の配置は、国が県や関係自治体の意向などを踏まえて決める。
 大熊町には、第1原発の溶融燃料に含まれる放射性物質などの分析・研究拠点の立地が決定。富岡町には廃炉作業に関わる研究開発や人材育成を行う廃炉国際共同研究センターの付属施設が設置される。
 県企画調整課の安斎浩記課長は「原発中心だった浜通り地方の産業構造を転換し、雇用を創出する基盤ができ始めた」と話す。施設の波及効果をどう地域に広げるかを検討する組織が近く設立される見通しだ。

<「転用分野多い」>
 地元企業も拠点整備を歓迎するムードだが、波及効果については期待と不安が相半ばする。
 広野町で電子基板を製造する「プリント電子研究所」は昨年4月、いわき市の3社とロボット開発に着手。ロボット製造会社を発足させ、構想へ参画することも視野に入れる。
 千葉正広工場長は「原発構内のがれき撤去や避難区域の除草など、転用できる分野は多い」と意気込むが、「働く場を整備しただけでは避難先の生活に慣れた住民は戻ってこないだろう」とみる。
 全町避難が続く大熊町の町商工会の蜂須賀礼子会長は拠点施設に地元の事業者がどう関わるかを注視し、「どんな施設ができるかにかかわらず、私たちが早く帰還して生活できるよう、街づくりに力を入れてほしい」と訴える。
 いわき明星大の高木竜輔准教授(地域社会学)は「拠点施設整備が地元住民の雇用創出につながらなければ、復興予算のばらまきに終わってしまう恐れがある」と指摘する。


2015年11月12日木曜日

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