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<一時帰還>広がる闇 孤立の不安

避難区域での準備宿泊に伴い、警察は地域の巡回活動を強化している=8月、福島県葛尾村
玄関に置かれた木刀。南相馬市の男性は「特に夜間が心配」と話す

 東京電力福島第1原発事故による避難が続く福島県内で、一時帰宅した住民から孤立の不安を訴える声が出ている。滞在世帯は一部にとどまり、非常時に頼る相手もいないからだ。関係機関はパトロールを強化するなど、安心感の醸成に努めている。

◎明かり乏しく ちょっとした物音が気になる

 「不審者が近づきやすいのではないかと心配で…」
 福島県川俣町の農業男性(64)が不安げな表情を見せる。帰還に向け、長期滞在が可能となる準備宿泊がことし8月に始まったのに伴い、妻と自宅に戻った。男性は「防犯カメラの設置も考えている」と話す。
 福島県内では現在、川俣町のほか南相馬市、葛尾村、川内村で準備宿泊が行われている。いずれも除染作業などで不特定多数の人々が地域に出入りしているものの、滞在する住民は全体の1割程度。夜間の明かりは乏しく、市街地にも暗闇が広がっている。
 医療機関で働く南相馬市の男性(54)は現在、週の半分以上を自宅で過ごす。「助けに来てくれるご近所がいないのは心細い。ちょっとした物音が気になる」。護身用の木刀を、玄関と枕元に置いて就寝しているという。
 南相馬市小高区で防犯パトロールに当たる志賀澄太郎さん(62)は「滞在を周囲に知られないよう、早めに消灯する住民も少なくない。それほど警戒心が高まっている」と指摘する。
 日常的に緊張を強いられる状況は、定住意欲の減退につながりかねない。
 10月下旬に葛尾村が開いた懇談会。避難男性の1人は「帰還のために一時帰宅しているのに、夜道を歩くと絶望感の方が大きくなってしまう」と訴えた。
 こうした不安を解消しようと、自治体側も対応に乗り出している。葛尾村は空き巣防止などを目的に13カ所に防犯カメラを設置。発光ダイオード(LED)を使った防犯灯の整備を計画する。南相馬市もカメラ設置の予算化、条例整備を既に終えている。
 各地では地域住民が警察と連携してパトロールも実施している。避難区域の多くを管轄する福島県警双葉署は「巡回のパトカーから音を流すなど、警察官の存在を周知する手法の導入も考えたい」としている。


2015年11月18日水曜日

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