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<その先へ>菜種から農業再生へ/風評乗り越え特産化

来年の菜種栽培に向け、水田を畑へと転換する作業に励む奥村さん=南相馬市原町区太田

◎農業 奥村健郎さん(南相馬市)

 福島県南相馬市原町区太田地区の農業奥村健郎さん(58)が、東京電力福島第1原発事故の風評を乗り越える特産作物として、菜種の作付けを広げている。ことしコメを作った2.9ヘクタールの水田の大半を来年、菜種畑に転換する。同じ志を持つ農家仲間と6月に株式会社を設立。南相馬産菜種生産の拡大と、営農再開を諦める住民の耕作も担い、地元の農地再生を目指す。
 奥村さんは原発事故で20キロ圏に接した太田地区の復興に携わり、水田の汚染除去に役立つ作物の模索でヒマワリを植えた活動が、2012年7月の本紙連載「ふんばる」に載った。
 菜種作りは同年秋、同地区の農家杉内清繁さん(64)が作付け自粛とされたコメに代わる作物として栽培を始めた。菜種から作られる菜種油には、放射性物質が移らないことが確かめられ、チェルノブイリ周辺でも大規模に作られている。奥村さんら共鳴した有志約20人が加わり昨年2月、社団法人・南相馬農地再生協議会を結成した。

 「菜種畑はことし、自分の畑1.2ヘクタールや、避難指示区域の小高区内も含め計30ヘクタールに広がった。そこから油が8トン搾られ、自前の商品もまずは軌道に乗った」
 同協議会が販売しているのは食用油「油菜(ゆな)ちゃん」。共同で菜種を栽培する相馬農高農業クラブが命名した。マヨネーズも商品化され、道の駅・南相馬などで売られている。
 株式会社は「アグリあぶくま」。杉内さんを社長に、奥村さんら地区の農家4人で設立した。
 「一番の課題は生産体制づくり。自分もことし、菜種以外に2.9ヘクタールの水田でコメを作ったが、来年は大半を菜種に転換する。さらに10〜20ヘクタール分の参加希望があり、100ヘクタール以上に広げていくのが目標。そのための実動部隊にしたい」

 昨年まで「実証栽培」扱いだった市内の稲作はことし、本格再開された。本年産米は放射性物質の測定検査で全て「不検出」。だが、原発事故後の風評と浜通りのコメの価格暴落もあり、地元農協は政府から転作補助金が出る飼料米として販売する。
 栽培面積はことしの722ヘクタールから来年ほぼ倍増する見通しだが「営農再開を諦めたり、耕作委託を希望したりする農家が多い。自分は新たに2ヘクタールの水田を借りるが、さらなる農地を守る役目も株式会社は担う」。
 地区ではことし、集落の仲間と初の直播(じかまき)による稲作も行い、収穫は上々だった。ベテラン農家が飼料米を作るという屈辱をばねに「もともと原発事故の影響が少なく、除染もほぼ終わった太田から、菜種油とともに『食べてもらえるコメ』をまた売り出したい」。再生への挑戦はこれからが本番だ。(寺島英弥)


関連ページ: 福島 社会 その先へ

2015年11月27日金曜日

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