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<もう一度会いたい>娘2人と無念の対面

ひとみさんが震災2カ月前に子どもたちと撮ったプリクラ。前列左が麻里さんで後列右が理加さん。最後の家族ショットとなった

◎(3)苦しんだ姿思い涙

 遺体安置所に横たわる次女の顔は別人のようだった。
 頬の皮膚がふやけている。長く水に漬かっていたせいだ。
 今野ひとみさん(45)=宮城県石巻市=と夫浩行さん(53)の次女=当時(16)=は震災19日目に発見された。家の向こうの富士沼に沈んでいた。
 ひとみさんは本人だと納得していない。

<我流で化粧>
 遺体の口を開けてみる。
 上の前歯の先っちょに治療の痕があった。
 「ああ」
 理加だ。
 次女は小学生の時、教室の掃除中にオルガンに顔をぶつけ、歯を欠いたことがある。
 白のパーカを着ていた。泥で黒ずんでいる。首回りにビーズアクセサリーの付いたデザインがお気に入りだった。
 遺体は検視を終えた。
 裸で引き渡された。
 遺体が多く、死に装束が手に入らない。
 バスタオルで体をくるんだ。
 納棺師も手配できない。
 我流で死に化粧を施した。
 パフでファンデーションを塗ろうとすると、皮がめくれる。
 ベビーパウダーを当てておしろい代わりにした。
 震災の時、家には理加さんのほか、長女の麻里さん=当時(18)=、同居する夫の父=同(77)=と母=同(70)=がいた。父は理加さん発見の2日前に見つかり、仮埋葬している。
 地元の火葬場は依然空きがない。秋田の湯沢市の施設を押さえ、荼毘(だび)に付した。

<口の中に泥>
 長女麻里さん発見の知らせはその時に届く。震災25日目。母も同じ日に見つかった。
 ひとみさんと浩行さんは次女の骨を急いで骨箱に収め、車で引き返した。
 麻里さんの遺体は傷んでいた。
 右の耳の付け根が少し溶けている。
 もう4月で気候が緩みだしていた。腐乱の兆候が見えても無理はない。
 石巻西高のジャージーの下の方をはいていた。この子の学校だ。
 「今野麻里」の刺しゅうが縫い付けてある。
 監察医から死体検案書が渡された。
 <口腔(こうくう)内に木片、泥入る>
 濁流にのまれ、もがき苦しんでいる姿が目に浮かぶ。
 床に膝を打つ音がした。
 夫が泣き崩れていた。


2015年12月03日木曜日

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