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<もう一度会いたい>恋や部活 次女おうか

理加さんの高校時代のノート。きちょうめんな性格が出ている

◎(6)突然奪われた幸せ

 社交的なお姉ちゃんとは好対照で妹は引っ込み思案だった。
 宮城県石巻市の今野浩行さん(53)と妻ひとみさん(45)の次女理加さんはいつも姉の背中に隠れ、もじもじしていた。
 授業でも、答えが分かっていても手を挙げない。保護者参観でひとみさんはじれったい思いをしていた。
 「学校でいじめに遭っても自分で抱え込み、親や先生に打ち明けないかも」
 おとなしい娘を心配し、「何かあったらすぐ言うんだよ」と諭していた。

<夢は栄養士>
 活発な姉への憧れがあったのだろう。中3の文化祭で副実行委員長を務め、全校生の前であいさつした。
 少しでも変わろうとしている。
 親の目にはそう映った。
 きちょうめんだった。字は丁寧。数学のノートは図形が定規とコンパスを使って書かれている。このまま印刷して学習書として出せるぐらいだ。
 部屋もきれい。整理整頓が行き届いている。四つ下の弟が散らかしてしょっちゅうけんかしていた。
 交友の広さはお姉ちゃんにかなわなかったが、恋は先を越した。
 高校生になったら急にオムレツを焼き始めた。料理には興味がなく、炊事も親任せだったのに。
 父の浩行さんが「どういう風の吹き回し?」と首をかしげていたら、調理師を目指す同級生のボーイフレンドができていた。
 居酒屋の息子さんで将来の跡取りだという。
 先方も親公認で、字が上手なのを買われてお店の品書きの代書を手伝っていた。
 なりたい職業が「銀行員」から「管理栄養士」に変わったのもこのころ。

<彼にケーキ>
 震災1年前の2月14日の前夜。
 職場の浩行さんの携帯電話が鳴った。理加さんからだ。夜の9時を回っている。
 「仕事で疲れているところごめん。帰ったらスーパーまで乗せてって」
 聞いたら、チョコレートケーキを焼いてしくじったという。
 母には「かえって手作り感が出ていいんじゃない」とフォローされたが、きちょうめん女子は妥協を許さない。材料を買い直して再挑戦したいという。
 娘にそんな感じでせがまれたらおやじも悪い気がしない。家に急行し、2人で車で買いに出た。
 当日。
 前の晩の悪戦苦闘をおくびにも出さず、理加さんは涼しい顔で彼に渾身(こんしん)の一作をプレゼントした。
 高校に進んで一皮むけたと親は感じていた。
 プライベートは充実し、スクールライフも吹奏楽の部活動で楽しんでいる。
 母のひとみさんは理加さんが何げなく口にした一言を覚えている。
 「こんなに幸せでいいのかなあ」
 夢心地に浸っていた。
 その数日後、津波にさらわれ、16歳で命を落とす。
 無念と思う時間さえ与えられなかった。


2015年12月08日火曜日

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